畜産大手、神明畜産が民事再生法、飼料高騰も影響か
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豚や牛の飼育から販売まで一貫して実施
「神明牧場」で知られる神明畜産(株)(東京都東久留米市)とその関連会社で豚肉・牛肉などの卸・小売を行う(株)肉の神明、肉牛の生産を手がける共栄畜産(有)が9月9日、東京地裁所に民事再生法の適用を申請し、監督命令を受けた。負債総額は約574億6,900万円。
神明畜産は1955年に創業し、67年に東久留米村(現・東久留米市)に設立された。神明畜産を筆頭とする神明グループは畜産大手であり、豚や牛の飼育から加工、販売まで一貫して行ってきた。栃木県那須烏山市の生産事業本部で養豚を行い、北海道白糠郡白糠町の肉牛牧場釧白食肉コンビナートでは、約1万5,000頭の肉牛を牛舎41棟で飼育するなど、北海道から九州まで各地に数多くの事業所を展開していた。生産した豚肉や牛肉などは、スーパー、デパート、コンビニ、問屋、小売店、生協などに卸すほか、(株)肉の神明が直営店である「肉の神明」の4店舗(滝山店、清瀬店、横須賀店、谷原店)を展開して販売していた。
神明畜産が民事再生法の適用申請を行ったのは、2022年7月に栃木県那須烏山市の養豚場で豚熱(CSF)が発生し、約5万6,000頭の豚を殺処分したことにより、資金繰りに影響を受けたことが大きな原因だとされる。豚熱は豚熱ウイルスによって起こる豚の伝染病で、これまで国内で約80例の発生があったことが確認されている。豚熱にかかった肉を食べても人体に影響はないとされるが、伝染力や致死率が高いため家畜伝染病予防法で家畜伝染病に指定されており、感染が見つかった場合は殺処分が行われる。
円安や穀物価格高で飼料代が高騰
また、牛や豚の生産コストの大きな部分を占めるのは飼料代だ。家畜のエサとなる配合飼料はトウモロコシや大豆油粕などの輸入穀物原料が主に使われている。円安や穀物価格、肥料価格、海上運賃の高値傾向が続いている影響を受けて配合飼料の価格が高騰していることも、同社の収益を悪化させたと考えられる。
政府は配合飼料の価格高騰が畜産経営におよぼす影響を緩和するため、一定額を「配合飼料価格安定制度」により補てんしているが、今回のように価格高騰が続くとその負担を緩和できるほどには追いついておらず、畜産業における実質負担が増えている。加えて光熱費や輸送費が高騰していることも、養豚や肉牛飼育のコストが上昇している原因となっている。
価格競争による影響
近年、国内の畜産農家数は減少しており、生産効率化などのため大規模化が進んできた。神明畜産も自動給餌装置、自動給水器、糞尿自動処理装置などの近代設備による省力化やコンピュータ管理により、低コスト化を図り大規模生産を行ってきた。しかし、飼料価格や光熱費などが上昇しても、価格競争などの影響でコスト増加分を小売価格に転嫁しにくい状況にある。さらに、コロナ禍における外食などの消費の減少により、食肉の販売が影響を受けていたことも同社の収益に影響を与えたと推測された。
円安や各種物価の高騰に加えて、コロナ禍による外食や鉄道・航空、衣料品など各分野での消費の減少は企業体力を大幅に奪うため、これからその影響がさらに表面化すると予想される。
【石井 ゆかり】
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