【福岡IR特別連載108】中国PAGのHTB買収 断念させられるのは九経連のみ
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マスコミは連日のごとくロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾有事に関する「日米安全保障問題」を取り上げ、詳細に報じているほか、安倍元首相の国葬に関をめぐり、同じ失敗を繰り返さないよう、テロ行為に対する「危機管理」のあり方について厳しく問うている。
つまり、これら全ては、我が国特有の「平和ボケ」から来る、全国各地の政治行政機関の関係者たちの、“予測もしていなかった”事態への想像力の欠如である。近年、同じ失敗を何回も繰り返し、その都度、2度と起こらないようにしなければならないとして、官民問わず、その責任者たちが世間に頭を下げている姿を頻繁に見かけるが、誠に嘆かわしい。
これらの醜態は、前任者の判断にあえて抗わず、単に「追認」する我が国特有の慣習から来ているのであり、既にこの国の文化とも言えるもものだ。しかし、近年ではそれが嵩じて、敢えて自らの判断を下さず、責任回避をするのが“常套手段”にもなっている。しかも、そのたびに、「コンプライアンス」「ガバナンス」を理由にするのである。
人と人とのトラブルを避け、可能な限り争わない事に努力するのはよいことだ。これは日本人が世界に誇れる文化で、温和な性格の人種の最たるものである。聖徳太子が言ったとされる「和を以て尊しと為す」が、古きより、この国の歴史でもある。だが、それを自己の責任回避に使うことは、これとは全く異質のものだ。
長崎県の大石知事、佐世保市の朝長市長の両氏の発言に、「中国企業がハウステンボスの新た所有者になっても...長崎IRに一切影響しない」「PAGには協力して欲しい」というのがある。前にも述べたように、我が国の「日米安全保障」「日米経済安全保障」「重要土地利用規制法」の観点から見て、“とんでもなく愚かな発言”であり、自己保全のためとしか捉えようがない。これは、近年この国の多くの組織人に見られる胆力のなさなのである。
米国『NewsWeek』が報じているように、今回のハウステンボス(以下、HTB)の買収企業「PAG」は香港に本社を置き、中国・習近平共産党政権に極めて近い国際不動産ファンドである。ファーウェイ問題と同様、我が国の危機管理(特にインテリジェンス分野)が適用されるべき相手なのだ(中国企業で共産党政権に抗う者などまずいない)。
その当該地を管轄する行政機関が、この売買交渉からは完全に「蚊帳の外」に置かれていたとはどういうことか。それにもかかわらず、長崎県と佐世保市はこのことに怒りもせず、事もあろうに、中国企業による買収を大歓迎している。中国企業に対する危機管理意識など全く感じさえない。彼らは、自らの責任回避を優先し、日米安全保障問題などはどこ吹く風なのである。管轄地域の行政の首長としてお粗末極まりない。
九経連、九州IR推進協議会は公に態度を示すべき時だ
前号で強調したように、HTB売却転売の“最終契約締結日は今月末日”だとマスコミが報道している。
従って、前述の日米経済安全保障の観点から、これを止めることが出来るのは九州・福岡財界を代表する経済団体組織「九州経済連合会」とその傘下にある「九州IR推進協議会」だけである。したがって、そのトップである同組織の倉富純男会長は、速やかに、HTB
売却問題への対応を公式に発言し、その意思を明確にすべきなのである。
当事者の県知事と市長がこのように愚かな態度で事態の推移を傍観しているなか、公に発言する立場にあるのは九経連(九州IR推進協議会)くらいであろう。「日米経済安全保障」の観点から、九州福岡の財界を代表してこれを容認出来ない、今後は中国企業が所有者するHTBに協力する事は出来ない、と毅然とした態度を示すべきだ。
九経連は、軍事、経済、両面におけるインテリジェンス(諜報)に関する危機管理を重要視し、台湾有事がクローズアップされる現状において真剣に対処すべき立場にある。この危機管理の重要性は、政府も令和3年『防衛白書』で訴えているほか、九州選出の麻生自民党副総裁も公に発信している。それを受けて危機管理に徹するのが、九州福岡の財界組織の上に立つ者の使命なのである。
日本が対米開戦に踏み切った「真珠湾攻撃」から、今年で80年となる。読売新聞社は自社のオンラインサイト「昭和史の天皇」音声アーカイブスで、当時の開戦に至る隠されて来た過去を公開し、あるハワイ在住日本人スパイの活動経緯を克明に記している。民間人になりすまし、真珠湾内米国海軍周辺のあらゆる軍事機密を長期に渡り、一命を賭して諜報(スパイ活動)を行い、常時、その情報を日本海軍に送っていたのだ。結果、ご承知の通り、その諜報活動が功を奏し、「我、奇襲に成功せり、トラ.トラ.トラ」と打電したのである。歴史上有名な話である。
前にも解説したが、その真珠湾攻撃命令の際の暗号「ニイタカヤマノボレ」は、HTB隣接の針尾の無線塔から発信されたのである。これが当該地・佐世保の歴史である。僅か80年前の話なのだ。
インターネットにGPS等の科学技術が発展している現在も、一旦台湾有事となれば理屈は同じで、戦端が開かれれば、ウクライナ侵攻と同じく大変な事態になるのだ。要は、麻生副総裁が言う「争いを起こさない為の危機管理とその抑止力の整備」が重要だということで、それが我が国の防衛となるのである。
前号、また本編連載「26」でも解説したように、中国習近平政権は昨年から“海外カジノ観光を規制”している。その代わりに、今回のように中国共産党に近い経営者がオーナーのPAGに、HTBを買収させるなどしている。見え透いた行動であり、もってのほかだ。それゆえ、中国富裕層に重きを置く長崎IR集客計画など、実現するはずもない。米国Bally'sが練っている福岡IRの計画と比べてみてほしい。
このような事も判断出来ず、長崎県知事は前知事政権を“追認”し、「今後、PAGには協力して欲しい」などと、とんでもない発言をしている。これを止めるには、最早、九州福岡財界組織のトップである倉富純男九経連会長が腹をくくって、買収契約の締結前に、その意思を世間に示す必要がある。そうすれば、もしかしたらこの買収劇の付加価値が大きく下がり、破談になるかも知れない。
【青木 義彦】
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