2024年12月26日( 木 )

活況を呈する福岡市内の開発 その陰で顕在化する建設業界の課題

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再開発による賑わいと停滞

 福岡市では、天神ビッグバンや博多コネクティッドといった再開発促進政策が実行されたことで、市の中心部天神・博多エリアのまちづくりが活況を呈している。

 天神ビッグバンは、老朽化の進行などにより更新期を迎えたビルを、規制緩和によって付加価値の高いビルへと建替えを誘導することで、新たな空間と雇用を創出しようというもの。2021年9月には、第1号案件である天神ビジネスセンターが竣工した。

 博多コネクティッドは、JR博多駅から半径約500mの約80haを対象エリアに、容積率緩和や国の金融支援、税制優遇などを活用することで、既存ビルを耐震性の高い先進的なビルへ建替えさせようというもの。博多スターレーン跡地では、博多コネクティッド第1号案件となる博多イーストテラスが、8月オープン予定となっている。また、福岡東総合庁舎跡地では、JR九州を代表とする企業グループがオフィスや店舗が入る複合ビルを計画。ビルのデザインを、「デンマーク王立図書館」をはじめ世界中で多くの実績を持つ建築デザイン事務所「シュミット・ハマー・ラッセン・アーキテクツ」(デンマーク)が手がけることでも話題となった。

 このほかにも、九州初となるザ・リッツ・カールトン福岡を目玉とする旧大名小学校跡地活用事業や、23年3月開通予定の福岡市地下鉄七隈線延伸事業(天神南~博多)といった交通網の拡充もあり、市中心部は、民間投資を呼び込む話題に事欠かない状況が続く。官製需要が民間投資を誘発し、投資が投資を呼ぶ好循環が生まれ、アジアの玄関口という立地特性から、海外資本を呼び込むことにも成功。企業立地は8年連続で50社を突破している(13~20年度)。

旧大名小学校跡地で進む再開発事業
旧大名小学校跡地で進む再開発事業

    一方で、市内における住まいの供給を支えてきた地場のマンションデベロッパーは、マンション用地の取得に頭を悩ませている。とくに市の中心部では地価が高止まりしていることに加えて、資材高騰の影響もあり、マンション開発が容易ではなくなってきている。このことは、天神を擁する中央区のマンションの計画戸数を見ると顕著だ。下表は、21年下半期と22年上半期の市内7区におけるマンションの計画戸数である。

 近年、中央区の計画戸数が1,000戸を割り込むことはなかったが、22年上半期では600戸を下回る結果となった。対して、博多区の計画戸数は2,000戸を突破している。九州初となる「ららぽーと福岡」の誕生によって、周辺エリアの那珂や竹下で開発が活発化。大型商業施設⇒アパート・マンションといった連鎖型の開発が進んでおり、博多区内に新たな商圏が形成されようとしている。マンション開発は、中心部から周辺部へと舞台を移さざるを得ないといえそうだ。

暗中模索続く人手不足問題

 どのような建築計画であれ、ゼネコンや専門工事業者がいなければかたちにならない。しかし、まちの発展を支える縁の下の力持ちである建設業者のなかでは、人手不足問題が深刻さを増している。

 建設業界に対する「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージは根強く、人材確保の際の障壁となっている。職人の待遇もリーマン・ショック以降は改善が進まず、仕事内容と収入が見合っていないとして、業界から去って行った若者も多い。結果として、技術の承継が進まず、職人の高齢化だけが進むといった悪循環に陥っている。当座の人材確保として、外国人技能実習制度を活用する企業もいるが、最長5年間という期限が設けられており、根本的な解決には至っていない。

 若い人材が業界入りし、定着するためにも、まずは待遇改善が必要であり、そのためにも適正価格の実現が求められる。ダンピング受注の防止はもちろん、労務単価のさらなる向上、常態化している早出・残業ありきの工期設定の解消など、業界が一丸となって環境整備に取り組むことで、「給料が高い」「休日が多い」「希望がもてる」の新3Kを提示することは可能なはずだ。

 コロナ禍に鑑みて、天神ビッグバンの期限が24年末竣工から26年末竣工へと2年間延長された。福岡市主導の再開発と、呼応する格好での民間開発の勢いは、当面続くことが予想される。同時に、熊本のTSMC新工場建設、鹿児島の京セラの工場新設など、九州各県でも大型建築工事が続く。人手不足もあり、職人を手配できないという事態が生じることは想像に難くない。

 九州の建設業界にとっては、開発が活況を呈する今こそ、次世代を担う人材への投資を加速させる好機だ。この機を逃せば、超高齢化社会が訪れる2025年以降、多くの開発計画が絵に描いた餅になってしまう恐れがある。変わるなら、今だ。

【代 源太朗】

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