2024年12月22日( 日 )

ロボット産業の拡大と韓国企業の競争力(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

脚光を浴びる物流ロボット

ロボット イメージ    ロボット産業を牽引しているのは、産業用ロボットであるが、サービスロボットの需要も徐々に拡大し、サービスロボットが産業用ロボットの市場規模を追い抜くと予測されている。ボストンコンサルティンググループ(BCG)によると、ロボットの世界市場規模は2020年の250億ドルから30年には1,600億ドルに成長すると予想され、21年から26年までの年平均成長率は17.45%になるだろうと予測されている。

 そのような状況下、最も脚光を浴びているのが物流ロボットである。サプライチェーンの大混乱が発生している今日この頃だが、その原因は物流現場において人手不足が深刻だからだ。ロボットの導入で製品破損の防止、人件費の削減、生産性の向上、プロセス自動化などの効果も期待できるため、大型物流センターなどではロボット導入による自動化が進んでいる。ロボットは、人のように疲れることもなく、ミスもなく、効率的に仕事ができるので、今後物流業界ではロボットの導入がますます進むだろう。

 ロボット産業の競争力からいうと、米国とEUは世界最高水準の技術をもっているし、産業用ロボットとロボット部品の分野では日本が世界をリードしている。一方、中国は映像とAI分野ではかなり進んでいる。韓国はロボットの需要は高いものの、技術面において米国に2~3年は遅れを取っている。

韓国企業の現状は

 韓国企業のなかでは現代自動車、サムスン電子、LG電子などがロボット産業を次世代の成長エンジンとして捉え、力を入れ始めている。現代自動車は米国のロボット専門企業であるボストンダイナミクス社に8億8,000万ドルを投資し、株式を80%保有している。自動車市場が大きく変わろうとしている時期に、同社への投資は次のモビリティ市場への布石として高く評価されている。

 現代自動車はロボット事業をグループの次世代のコア事業として育成していくことに注力しそうだ。一方、LGはサービスロボットに力を入れ、競争優位性を確保していく戦略を取っている。サムスンはロボット事業部を組織し、レストランでの注文、決済、配食などの手伝いをするロボットの開発をしている。

 しかし、韓国のロボット産業の競争力は世界水準からみれば少し遅れている。とくにロボットの減速機、サブモーターなど、核となる部品においては日本への依存度が高く、駆動部の部品においては、国産化率が15%に過ぎないという情けない状況である。

 韓国のロボット産業を振興するためには、人材の育成、部品の日本依存改善などが求められている。高齢化や人材不足が進むなか、ロボット産業は多くの産業と関わりあう大事な産業であることは間違いない。ロボット産業をいかに育成していくかで、国の競争力が左右されることになるだろう。

(了)

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