2024年12月22日( 日 )

【福岡IR特別連載109】中国企業のHTB買収と日米安保が繋がらない関係者

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佐世保港 イメージ 佐世保市行政は5月、国に対して、「同市は我が国の歴史的特殊な国防上の位置にあり、近年、その役割はますます重要になっている」として、令和5年度「県の施策等に関する重点要望事項」(82項目・84ページ)を長崎県経由で提出している。

 その概要は、県に対して、「その国防に関わる重要性を充分理解して頂き、同市と長崎県が一緒になって、国にその特殊な国防施設に関連する82項目の要望を聞き入れてほしい」というものである。

 特に本件IRに関して、その特殊性(米国海軍、海上自衛隊、陸上自衛隊の3基地と国境離島等が存在する)に鑑み、佐世保市単独では何も出来ないので、長崎県と一致協力して、ハウステンボスを中心とした本件IR事業を積極的に準備実行しているので、是非とも本件IR誘致開発への区域認定申請への承認をして欲しいとしている。

 当然、その長崎IR実現への思いが形となったものが既存のハウステンボス中心のパッケージプロジェクトであり、その効果と信憑性を高く評価してほしいと記述している。当該管轄行政としてはもっともな話である。

 この時点では「ハウステンボス売却転売」問題が起こるなど一切予想もしていないようであり、本件IRを管轄する当該地行政としては大変お粗末な話だ。

 この要望書は佐世保市長の朝長則男氏と佐世保市議会議長の田中稔氏両名署名の下、提出された。5月の時点では、ハウステンボス所有者であるHISが香港に本社を置くPAGに売却するなどとは想定もしていないし、一切の記述もない。朝長市長以下らにとって中国企業によるHTB買収など全く想定外であり、本当に知らなかったし、知らされてもいなかったのである。

長崎IRは日米安全保障問題に繋がる大問題だ

 いまだ長崎IRのほぼ全ての関係者達は、この国特有の「平和ボケ」により、本件IR事業が日米安全保障問題および日米経済安全保障問題に直接繋がる事を一切理解していない。地方都市での経験値しかないから、そうした想像力すらないのか。本来なら、彼らは身を挺して中国企業によるハウステンボス買収をとめる立場にある人達であり、役目をはたしていない。

 世間は「ハウステンボスの所有者が中国企業に代わっても、一切長崎IRに影響しないとは何事か」と憤り、SNSは炎上寸前。自民党の議員から国民民主党の代表までが強い懸念をあらわにして発信しているのだ。こんな事が何故わからないのか?不思議である。

 前述の佐世保市行政が提出している要望書の中で「歴史上重要な国防の要衝」だと自ら説明しているのに、長崎県知事は「中国企業PAGに協力してほしい」など支離滅裂な発言をしている。さらに、彼らのほぼ全員が「IR即ちIntergreated Resort(統合型リゾート)」のカジノを含む具体的な事業内容を表面しか理解していない。これは「ギャンブル依存症」一辺倒で反対する人達と同じだ。反対派と賛成派がほぼ同レベルの無知な人達であると断言できよう。

 IR、Casino、MICE等の施設(外側の箱ではない)は、まさに、「日米経済安全保障問題」の中のソフトウェアの「塊」である。

 例えば、国内外から来る富裕層の顧客管理だけでも大変付加価値の高い情報の集積であり、マネーロンダリング等セキュリティ上の最優先課題である。これらは全てにおいて高い能力を要するインテリジェンスの利用管理問題なのだ。

 金融ファンド「PAG」の経営者が中国習近平政権と深い繋がりのある以上、パッケージプロジェクトである長崎IRに対し、国が区域認定申請の承認を出すなど、日米安全保障および日米経済安全保障の観点から“あり得ない話”なのである。いまだ彼らは理解してないのか、あるいは自らの責任を回避するために嘘をついているのか不明だが、本当に「IR」を理解しておらず日米安保問題および日米経済安全保障を理解しておらず、それらとハウステンボス売却が繋がっていないというのが筆者の感覚である。誠に情け無い話だ。

 先日、福岡で行われたある会合で、麻生太郎自民党副総裁が重ねて台湾有事等に関する「日米安全保障問題」において自主防衛の重要性を力説する中、その後にあいさつした九州経済連合会会長の倉富純男氏が「長崎IRに期待している」と語った。これは全く辻褄が合わず、“愚の骨頂”としか言いようがない。

 昨日、西日本新聞が報じたように、筆者は、最初から民間企業であるHISの澤田秀雄氏が「背に腹はかえられぬ」ために売却したことを責められないと解説している。ただし、ハウステンボス事業と本件IR事業は全く別物であり、中国企業が関連する「長崎ハウステンボスパッケージIR」に、国が承認を与える事などは絶対にないのだ。要は、この結果を招いた責任は、当該地を管轄する長崎県と佐世保市にある。

 重ねて解説するが、佐世保市は「日米安全保障」の要であり、危機管理に関わるインテリジェンス(諜報)が最優先の問題である。そして長崎IRのパッケージプロジェクトであるハウステンボスは、「日米経済安全保障問題」におけるインテリジェンスに大きく関わる。こんな事が理解出来ない人達に、この国の平和と経済成長などを託せるはずがない。

 インターネット、GPS等が発展している現在においても、台湾有事ともなれば、理屈は同じで、戦端が開かれれば、ウクライナ侵攻同様に大変な事態になる。要は、麻生副総裁が言う「争いを起こさない為の危機管理とその抑止力の整備」が我が国の防衛にとって大変重要なのである。

 前号および本編連載の26号でも既に解説しているように、中国習近平政権は昨年から“海外カジノ観光を規制”している。そうした状況下において、中国共産党に近い企業を誘致し、ハウステンボスを買収するなど、結果が見えすぎており、実現する事はない。中国の富裕層に重きを置く長崎IR集客計画などは、国内からの集客に力点を置いた福岡IR(米国Bally's)とは比較にならない。

 こんな事も判断出来ず、長崎県知事は前知事方針を追認し「今後、PAGに協力してほしい」などというとんでもない発言をしているのだ。これらを止めるには、九州・福岡の財界組織のトップである九州経済連合会会長の倉富氏が腹をくくって、PAGによるハウステンボス買収契約の締結前に、その意志を世間に示す事である。その結果次第では、このハウステンボスの評価額が大きく下がり破談になるかもしれない。

【青木 義彦】

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