劇団わらび座、完全復活に向けた道程 確固たる経営基盤の確立目指す(前)
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(一社)わらび座
代表理事 今村 晋介 氏1951年に東京で創立し、53年に秋田県仙北市に本拠地を移した「劇団わらび座」は、日本各地の舞踊や民謡を舞台化した作品や、独自のミュージカル公演などで日本屈指の観客動員数を誇ってきた((株)データ・マックスは2017年から福岡公演を主催)。その劇団わらび座を運営する(株)わらび座が21年11月2日、民事再生法手続開始決定を受けた。
今年3月1日には劇団業務などの非営利事業を(一社)わらび座が、温泉・ホテルなどの営利事業を新設した(株)あきた芸術村が引き継ぐかたちで、新たな経営体制がスタートした。
わらび座の今村晋介代表理事(あきた芸術村代表も兼務)に再生への道筋や、今後の取り組みなどを聞いた。(聞き手:(株)データ・マックス 執行役員 鹿島 譲二)
クラウドファンディング実施 目標を達成
──新たなスタートを切るべく、3月からクラウドファンディングを実施されました。成果のほどはいかがでしたか。
今村晋介氏(以下、今村) 「どん底からの再生プロジェクト」と銘打ったクラウドファンディングを3月10日から5月20日までの期間で実施し、おかげさまで目標の1,000万円を大きく超える1,293万円のご支援をいただきました。
プロジェクトに対しては、教育評論家の「尾木ママ」こと尾木直樹氏や、振付師のラッキィ池田氏をはじめとした制作スタッフの先生方から温かい応援メッセージをいただきました。
尾木氏は、練馬区立石神井中学校の教諭時代に、修学旅行でわらび座に生徒たちを引率して来られた時からのご縁です。尾木氏が最初にわらび座に来られた1980年代は、「校内暴力」や「学級崩壊」が社会問題化している時期でした。世間一般では“不良”というレッテルを貼られている子どもたちが、わらび座を訪れ、舞台を観て、とても感動してくれたそうです。そのなかで、役者と生徒が共にソーラン節を踊るというプログラムがあったのですが、最初は嫌がってまったく踊ろうとしなかった子どもたちも、役者たちの物事に全力で向き合う姿勢に心を打たれたのか、2時間後にはクラスメートとともに汗を流して踊るようになったといいます。こうした光景を目の当たりにした尾木氏からは、「わらび座には子どもたちを変える力があります。クラウドファンディングにぜひご協力ください」といった内容のメッセージをいただきました。
コロナ禍でテレワークが増加するなど、人と人とのコミュニケーションの機会が減少してきたことにともない、孤独を感じる人が増加しているという話を最近よく耳にします。我々は、そうした孤独を感じている方々に対し、舞台を通じてコミュニケーションが持つ可能性をお伝えすることができるのではないだろうかと考えています。学級崩壊における修学旅行と同様、企業研修でわらび座にきてもらい、コロナによって失われかけたコミュニケーションを取り戻してもらうきっかけになるような取り組みにも今後力を入れていきたいですね。
──民事再生法手続開始決定を従業員の皆さんはどう受け止められたのでしょうか。
今村 昨年11月2日に民事再生手続開始決定を受けたわけですが、それまで社員一同「今はコロナで苦しいが、何とか乗り切ってみせる」という強い決意のもと、日々を過ごしていました。その分、喪失感は計り知れないものがあったと思います。「裏切られた」「何で経営陣はもっと早く教えてくれなかったんだ」との思いも強かったことでしょう。
しかし、事業をストップしてしまえば返済が滞ってしまうのも事実です。演劇の世界には「Show Must Go On」(ショウ・マスト・ゴー・オン)という言葉があります。文字通り、公演を続けながら清算をしていかなければなりません。役者もスタッフも複雑な精神状態で舞台を上演したうえに、お客さまに募金の呼びかけなども行わなくてはならず、ものすごい葛藤があったことでしょう。
(つづく)
【文・構成:新貝 竜也】
<プロフィール>
今村 晋介(いまむら・しんすけ)
1979年生まれ。千葉県袖ケ浦市出身。茨城大学を卒業後、(株)わらび座に入社。2014年に(株)ジョイ・アート出向。取締役・坊っちゃん劇場支配人に就任。18年(株)わらび座帰任。取締役・劇場事業本部長就任。21年に(一社)わらび座代表理事に就任。法人名
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