新電力の石川電力が自己破産へ、電力市場高騰の影響
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電力市場の価格高騰で、事業継続が困難に
新電力の石川電力(株)(石川県金沢市)が、金沢地裁に自己破産申請を行う準備に入った。石川電力は2020年から21年の冬季の電力市場価格の高騰のあおりを受けて、事業を継続することは困難と判断したという。2022年8月末をもって利用者への電力提供を終了しており、10月4日までに事業を停止した。利用者に向けては、6月末までに石川電力のパートナー企業である(株)エネクスライフサービスへの契約変更、またはほかの電力会社への切り替えを促した。負債金額は2億円と見込まれている。
石川電力は県内初の新電力で、県外に流出している電力売上を県内に循環させることによる地域活性化を目指して、電力小売全面自由化が実施されて間もない16年9月に設立された。新電力とは、電力自由化により電力小売業に新たに参入し、電力を販売している企業を指す。石川電力では、家庭向けや法人向けの一般的なプランのほか、電気代の一部を地元の地区に寄付し、地域のための活動資金として活用する「地域応援でんき」などのプランも展開していた。
石川電力は自社の発電設備がなく、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を仕入れて販売していた。そのため電力の原価、つまり電力サービスを提供するためにかかる主な費用は、電力の仕入れ値、送配電網の利用料金として送配電事業者に支払う「託送料金」、システム費用や人件費などの管理費からなっていた。一般的に、電力小売事業は薄利で電力を供給しているビジネスだ。
2020~21年冬に卸電力市場価格が上昇
日本では再生可能エネルギーが増加傾向にあるが、20年の電源構成のうち液化天然ガス(LNG)が39.0%、石炭が31.0%、石油が6.3%と多くを占め、電力は主に火力発電により賄われている。そのため、電力の需要動向とともにLNGなどの燃料価格や火力発電所の稼働状況も電力市場価格に反映されやすいと考えられる。
20年12月から21年1月にかけて、LNG価格が大幅に上昇したため、日本卸電力取引所の「スポット市場」の価格が高騰した。スポット市場とは、オークション形式により前日に取引する量とその価格を決める「1日前市場」のことである。通常のスポット市場の価格は1kWhあたり約10~50円であるが、この時期には1kWhあたり200円を超える時間帯が続いた。このことにより、電力の仕入れ値が大幅に上がったため、電力の提供価格を原価が上回り、同社の採算が悪化したと考えられる。
また、21年秋から22年にかけてLNGなどの燃料の値上がりにより、電力スポット市場価格の高騰が続いた。21年12月~3月にかけては最高価格が80円となり一昨年ほどではないが、大幅に値上がりした。なかでも、3月16日には最大震度6強を観測した「福島県沖地震」が起こり、東北地方と関東地方の複数の火力発電所が稼働を停止し、加えて3月下旬の寒波により電力需要が増えた影響を受けて、電力市場価格が高騰した。これらのことも、同社の収益に影響を与えたと予想される。
近年、新電力の倒産や事業撤退が相次いでいる。国際情勢により発電燃料の価格が高騰し、加えて、ここ数年は休止状態の火力発電所を増やす傾向にある。これらの影響を受けて、電力スポット市場の価格が高騰する傾向にあり、新電力にとって厳しい状況が続いている。
【石井 ゆかり】
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