劇団わらび座、完全復活に向けた道程 確固たる経営基盤の確立目指す(後)
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(一社)わらび座
代表理事 今村 晋介 氏1951年に東京で創立し、53年に秋田県仙北市に本拠地を移した「劇団わらび座」は、日本各地の舞踊や民謡を舞台化した作品や、独自のミュージカル公演などで日本屈指の観客動員数を誇ってきた((株)データ・マックスは2017年から福岡公演を主催)。その劇団わらび座を運営する(株)わらび座が21年11月2日、民事再生法手続開始決定を受けた。
今年3月1日には劇団業務などの非営利事業を(一社)わらび座が、温泉・ホテルなどの営利事業を新設した(株)あきた芸術村が引き継ぐかたちで、新たな経営体制がスタートした。
わらび座の今村晋介代表理事(あきた芸術村代表も兼務)に再生への道筋や、今後の取り組みなどを聞いた。(聞き手:(株)データ・マックス 執行役員 鹿島 譲二)
舞台を通じて郷土愛を育む
──初めて観たわらび座の舞台が「ジパング青春記」でした。あの作品は、震災被災者にとって非常に心強い内容でした。
今村 我々は、その時代・地域に合った作品って何だろう?と常に自問自答しています。現在、劇場では、龍角散Presents「ゴホン!といえば」の公演が行われています。この物語は江戸時代の秋田藩が舞台で、当時の秋田藩藩主・佐竹義堯のぜんそくを治すために、藩秘伝の妙薬に改良を加える1人の青年医師・藤井玄信にスポットを当てており、彼のそのときの成果が、後の「龍角散」へとつながっています。龍角散のルーツが秋田だということを、もっと秋田の人たち、とくに子どもたちに知ってもらいたいですね。「秋田にはこういう誇れるものがあるんだ」と郷土愛を語れる子どもが1人でも多く育ってほしいですし、今回の「ゴホン!といえば」を観たことがきっかけとなって、子どもたちが郷土愛を抱いてくれたら幸いです。
──今後の取り組み、目標についてお聞かせください。
今村 コロナ禍で顕在化したように、お客さまからの入場料収入というものは、どうしても外的要因に大きく左右されてしまいます。新たな感染症が発生したり、自然災害があったりするたびに公演休止を余儀なくされて収入が減ってしまい、皆さんにご迷惑をおかけしてしまいます。従って入場料収入だけに頼るのではなく、スポンサー収入を増やして確固たる経営基盤を確立しなければなりません。
秋田県においても高齢化が進行しています。現在、伊徳地域振興財団の助成を受けて秋田大学高齢者医療先端研究センターと共同で、ミュージカルや演劇が認知症予防に、どのような効果をもたらすかの調査を行っています。65歳以上の男女に参加していただき、認知機能・身体機能などの数値を測り、月に2回、演技、歌、ダンスなどのレッスンを受けてもらい、半年後にオリジナルのミュージカルを上演、その後、改めて数値を測定します。コロナ禍により4カ月間、研究がストップしていましたが、それもようやく再開されましたので、研究結果が出ましたら、皆さんにお知らせします。この取り組みが地域の高齢者の健康維持につながることを願ってやみません。
劇団などの文化・芸術というものは、社会貢献性の非常に高い分野なのですが、これまでは、あまりそれをアピールしてきませんでした。今後はそうしたものを、もっと前面に押し出していく必要性もあると感じています。
──最後にわらび座のファンの方々にメッセージをお願いします。
今村 私たちは何よりもお客さまの声に励まされています。そして、それが刺激・パワーとなって、舞台に還元させることができます。これまで以上にお客さまからの生の声を大切にして、より一層、舞台の質向上に取り組むつもりです。もっともっと多くのお客さまに我々の舞台を観てもらい、感動を届けられたらと考えていますので、これからも応援をよろしくお願いします。
(了)
【文・構成:新貝 竜也】
<プロフィール>
今村 晋介(いまむら・しんすけ)
1979年生まれ。千葉県袖ケ浦市出身。茨城大学を卒業後、(株)わらび座に入社。2014年に(株)ジョイ・アート出向。取締役・坊っちゃん劇場支配人に就任。18年(株)わらび座帰任。取締役・劇場事業本部長就任。21年に(一社)わらび座代表理事に就任。法人名
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