2024年11月21日( 木 )

原子力発電所の運転期間、60年超えを事実上容認へ

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福島第一原発事故で導入された運転期間60年の上限

 10月5日に開催された原子力規制委員会にて、「原子炉等規制法」による原子力発電所の運転期間を原則40年、最長60年とする規制を削除する見通しが示された。事実上、60年を超える原発の運転を認める方針だ。

 かつては原発の運転期間を定める法律はなかったが、2011年の東日本大震災において福島第一原発の事故が発生したことにより、原子炉等規制法が12年に改正された。この改正により、原発の運転期間は40年とすること、1回に限り20年延長できるという基準が導入された。

 政府は昨年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図るなかで、可能な限り原発依存度を低減する」という方針であったが、50年カーボンニュートラル実現に向けて今年5月に公表した「クリーンエネルギー戦略」では原子力を最大限活用すると明記し、大きく方針を転換した。今回の原発の運転期間の延長は、「原発を最大限活用」する方針のなかでの1つの取り組みだと考えられる。

「地震大国」の日本、安全の最優先が必要

日本の原子力発電所の現状(資源エネルギー庁資料より)
日本の原子力発電所の現状(資源エネルギー庁資料より)

 現在、運転年数が40年を超えているのは、茨城県の東海第二発電所(43年)、福井県の美浜発電所3号機(45年)、高浜発電所1号機・2号機(47年と46年)の4基となっている。これらの原発のうち、再稼働しているのは美浜原発のみだ(以上、9月13日時点)。東海第二原発と高浜原発は設置変更許可を取得しているが、いずれも再稼働までに時間がかかる見込みだ。高浜原発はテロ対策施設が未整備であるため、工事を実施している。東海第二原発も安全対策工事やテロ対策施設の整備が進められている。これらの工事により再稼働まで時間がかかっている原発が運転できる期間を延ばしたいということも、今回の60年超え運転を事実上認める方針を提示した理由の1つと予想される。

 また、40年を超えて原発を運転する場合は、新規制基準への適合に必要な許認可、特別点検の実施、高経年化技術評価などを行い、「運転期間延長許可制度」により許可を得る必要がある。運転年数が30年以上40年未満の原発は10基以上あり(9月13日時点)、あと数年で運転期間延長許可が必要になるとされていた。一方、政府は運転期間の規制に関して今後法整備を行うとしており、原発が40年を超えて運転する場合の扱いが注目される。

 60年超えの運転を事実上認めることは、エネルギー基本計画の「可能な限り原発依存度を低減する」という方針に逆行しているのではないだろうか。また、日本は地震大国だ。原発は地震により放射能漏れや大規模事故につながる恐れがある。原子力規制委員会で例として挙げられた、運転期間の上限のない国や60年を超えて運転をしている国がある欧米は、大地震がない国も多い。そのため、同じ土俵で議論することで「安全性」が確保できるとは考えにくい。

 東日本大震災があった11年以降、原発の発電電力量が大きく減少した。しかし、今回の60年超え運転を事実上認める方針により、稼働する原発が増え、運転期間が延長されることで設備の経年劣化が進むことが懸念され、「安全を最優先」するという視点をもつことが求められている。

【石井 ゆかり】

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