2024年12月22日( 日 )

自民党は旧統一教会とのズブズブの関係を断てるのか

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 臨時国会が10月3日に始まっても、「旧統一教会との関係を断つ」と明言した岸田政権(首相)の本気度は見えてこない。初日の所信表明演説で「消費者契約に関する法令等について見直しの検討をする」と述べたものの、臨時国会での法改正実現の決意表明はなかった。「検討使」と揶揄される岸田首相らしい、「やっている感」演出に止まっている体たらくなのだ。

 旧統一教会の名称変更問題で「下村博文・元文科大臣の意向が働いていることは間違いない」と断言した前川喜平・元文科事務次官は、自民党と統一教会は「貸し借り関係(ギブ・アンド・テイクの関係)にある」と指摘した。選挙での献身的支援(信者の無償労働提供)の見返りに自民党は、旧統一教会の高額献金(韓国教団への日本人の国富流出)を野放しにするなどの便宜供与をしてきたというわけだ。 

 しかし口先だけの岸田政権は、「カルト規制新法(法改正)を臨時国会で成立させる」という決意表明をしていない。統一教会との貸し借り関係を断つには、選挙支援を断ると同時に便宜供与を止めることが不可欠だ。これまで放置されていた高額献金の根絶可能な新規立法を実現するともいえるが、その道筋がいまだに見えてこないのだ。

 8月には岸田首相の肝煎りで「旧統一教会問題に関する関係省庁連絡会議」(代表・葉梨康弘法務大臣)が発足、9月初旬から約1カ月の相談集中強化期間が始まったが、フランスのような反セクト(カルト)法のような新たな立法措置には関わらないと事務方は公言。岸田首相の消費者契約の見直し検討発言が報じられても、その立場には変わりなかったのだ。

 「発信力」「突破力」に秀でていると報じられる河野太郎・デジタル担当大臣も、岸田首相と五十歩百歩。紀藤正樹弁護士らがメンバーの「霊感商法等悪質商法への被害対策検討会」を立ち上げ、初回会合から新規立法を求める声が出たのに臨時国会での法案成立の意気込みを語ることはないのだ。

 このままでは“ガス抜きパフォーマンス検討会”で終わりかねないと河野大臣会見で指摘したが、「検討会の議論を見守る」という待ちの姿勢。そこで9月16日の会見では「『新規立法、法改正が必要』という結論が(検討会で)出た場合には大臣ポストをかけて具体化するのか」と河野大臣の覚悟を聞いたが、それでも「結論をしっかり見ていきたいと思う」と答えるだけ。紀藤弁護士の特命大臣設置の提案に絡めて、「河野大臣が自ら名乗り出て、『新規立法をやらせてください』と(岸田首相に)いう考えはないのか」とも聞いたが、「議論を見ていきたいと思う」と同じ回答を繰り返すだけだった。

 9月30日の会見でも同主旨の質問をしたが、突破力のある踏み込んだ発言が飛び出すことはなかった。

 ──霊感商法等の対策検討会で新規立法・法改正という声が出て、「韓国での直接献金を今の法律では防げない」という声が出ているが、これを受けて河野大臣の意気込み、たとえば、「臨時国会でカルト規制法を成立させるように全力投球する」という考えを聞きたい。

 河野大臣 まだ検討会、続いております。

 ──臨時国会の日程を逆算すると、いつまでに検討会の結論を出して、法律作成のチームが準備をして(国会に提出)、審議をして法律を成立させるという日程感については想定していないのか。

 河野大臣 先ほど申し上げた通りです。

 ──検討会での意見が反映されない可能性が(あるのではないか)。

 河野大臣 お答えしている通りです。はい、終わり。

    ネットで視聴可能な大臣会見動画ではここで終了となっているが、この後も私は質問を続けていた。

 ──全然、具体性がないではないか。「客寄せパンダ大臣」「パフォーマンス大臣」と言われても仕方がないのではないか。もっと具体的に答えてください。臨時国会の日程を考えたら、いつまでに検討会の結論を出して、法案づくりをするのか。どこが(新規立法の)担い手になるのか、さっぱりわからないではないか。消費者庁でやるのか。

 ここで河野大臣のリモート会見の画面が消えたが、最後の削除された部分はフランス10の公開動画で見ることができる。ネット上で視聴可能な「河野大臣記者会見(9月30日)」の動画と見比べることで、最後の部分の削除(隠ぺい)を確認することができるのだ。

◎「河野大臣記者会見(9月30日)
 私との質疑応答部分:28分56秒~3分7秒
◎最後の部分のある「フランス10の河野大臣会見(9月30日)の動画

 河野大臣の本気度不足は10月3日の会見でも見て取れた。この日の会見は10分と短く、私が指されることはなかったが、朝日新聞の記者の質問に対して具体的に答えようとしなかったのだ。

 ──(朝日新聞)消費者契約法改正のスケジュール感についておうかがいします。今日午後の岸田首相の所信表明のなかで消費者契約法の見直しについて言及される見通しになっている。この改正案について臨時国会中に出す考えでしょうか。

 河野大臣 総理の演説についてはまずお聞きください。

 ──消費者契約法改正については臨時国会中に出す考えでしょうか。

 河野大臣 総理の演説についてはまず総理の演説をお聞きください。

 正直言って唖然とした。担当大臣としての説明責任を放棄したに等しいと呆れたのだ。所信表明演説で「消費者契約の見直し検討をする」と述べることになっていたのだから当然、いつまでに検討を終えて法案を提出、臨時国会で成立させるのか否かの日程感を共有していないとおかしい。もし岸田首相が今国会での新規立法を想定していないのなら、「会期延長をしてでも新規立法(法改正)をすべきです」と訴える担当大臣としての責務も担っているはずだ。それなのに河野大臣は、臨時国会での改正案提出の有無さえ答えようとしなかったのだ。このときに私は改めて「客寄せパンダ大臣」「パフォーマンス大臣」と呼ぶのがぴったりと思ったのはいうまでもない。

 12月初旬までの臨時国会では、旧統一教会への解散命令請求やカルト規制のための新規立法(消費者契約法改正など)でめぐり、与野党が激突するのは確実だ。岸田政権が「やっている感」演出のパフォーマンスで乗り切れるのか。河野大臣が“客寄せパンダ大臣”の汚名を返上、新規立法の牽引車役になるのか。見せ場が多くなりそうな臨時国会から目が離せない。

【ジャーナリスト 横田 一】

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