2024年12月22日( 日 )

アベノミクスに無反省 円安による物価高の元凶・黒田総裁

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黒田 東彦 日銀総裁
黒田 東彦 日銀総裁

    113日に円相場が一時1ドル147円台後半となり、約32年ぶりの円安水準に下落した。しかし、安倍晋三元首相とともにアベノミクス(異次元金融緩和などが柱)を進めた黒田東彦日銀総裁が反省や謝罪をする気配はまったくない。行き過ぎた円安で輸入物価高を招き、国民生活が苦境に陥ってもアベノミクスを肯定的に評価している。9月22日の会見で自国通貨の価値を半減させたことについて質問したが、黒田総裁は次のように反論した。

 ──安倍総理とともにアベノミクス、異次元緩和を進めた結果、10年経つと、(ドルに対する)円の価値は半減して行き過ぎた円安で輸入物価高、国民生活は苦しくなっている。(異次元緩和が柱のアベノミクスは)明らかな失敗ではないかと思うのですが、その認識はあるのでしょうか。

 黒田総裁 ありません。

 ──(円安で)これだけ国民生活が苦しんでいるのにまったく責任を感じていないのか。過去に、古今東西、自国の通貨(価値)を半減させて評価されるケースはあるのか。

 黒田総裁 半減させていませんし、何回も申し上げますが、2013年以降の金融緩和の下で政府の政策とも相まってデフレでない状況をつくり出し、かつ実質的な成長も1%台前半のレベルに到達し、雇用を非常に大きく拡大し、雇用者所得も伸びたということであります。ただ先ほど来、申し上げている通り、賃金・物価は1%未満で止まっていたということであります。ですから、そのなかでさまざまなことがあったのは事実であり、2%が安定的・持続的に達成できていないことは残念でありますけれども、ご指摘のような問題があるとは思っていません。

 ──国民がこれだけ物価高に苦しんでいるのにまったく責任を感じていないと。アベノミクス、異次元金融緩和を見直すつもりはない考え方なのか。

 黒田総裁 発言の主旨は事実に基づいていない話で、何回も申し上るが、デフレのない状況をつくり出し、成長と雇用を回復させた実績はあったと思うが、今の時点の物価上昇は相当部分が国際的な商品価格の上昇によっているわけで、我が国は2%台後半の上昇になっているが、欧米を見れば、8%から10%の物価上昇になっているわけだ。そうした状況をよく考えて判断してほしいと思う。

 ──自国通貨の価値は民主党政権時代の70円台から140円台へと半減しているのではないが・・・。それは事実ではないか。

 黒田総裁 無言(質疑応答終了)

 黒田総裁は「発言の主旨は事実に基づいていない」と反論したが、民主党政権時代に1ドル70円台にもなった円相場が140円台に下落したのであり、円の価値がほぼ半減したのは紛れもない事実なのだ。

 12年12月の第二次安倍政権誕生当時からアベノミクス批判をしていたエコノミストの藻谷浩介氏は、「安倍氏の政治と経済運営 “まつりごと”酔ったツケ」と銘打った10月9日の毎日新聞で、安倍元首相が13年に始めた「異次元金融緩和」を「大失敗政策」と一刀両断にした。「世界は日本経済をドル換算で見ている」と指摘したうえで、日本の名目GDPがドル換算で史上最高だったのは野田佳彦氏が首相だった12年(6.3兆ドル)に対して、第二次安倍政権時代の19年には5.1兆ドルと2割近くも減ったことに注目。「異次元金融緩和が、円安誘導で日本経済の価値を大きく下げた大失敗政策であった」と結論づけたのだ。

 そして藻谷氏はこう続けた。

 「経済情勢の悪化に対しては、まだしもいろいろな方策を模索可能である。それよりも恐ろしいのは、無意味な円安を招いた責任、祭りに酔っていた者たちの責任が、自覚されないままになることだ。そんな日本であれば、これからもまた、誰かを担ぐ“まつりごと”に酔った末の過ちが、繰り返されてしまうだろう」。

 7月8日の「『アベノミクス』のメリットばかり強調の安倍元首相」で紹介した通り、安倍元首相も黒田総裁と同様、円安を招いた責任に無自覚だった。亡くなる3日前の宮城選挙区での応援演説で、「円安はチャンスなのです。100円が135円になっていれば、(外国人観光客が)日本に35%引きで行けるようになる。日本に行けば今までよりも35%引きになるわけです」とアベノミクスのメリットを強調。35%も輸入物価高になる日本国民の弊害(デメリット)を軽んじる自己陶酔型演説をしていたのだ。

 異次元金融緩和は大失敗政策だったと認めずに反省も謝罪もしないのは、安倍元首相も黒田総裁も瓜二つ。アベ政治を神格化することにつながる国葬の危うさはここにある。自国通貨価値を半減させた大失敗政策の責任追及がなされないまま、まるで成功した経済政策であるかのように捉えられて継承されてしまうことだ。亡くなってもなお安倍首相は背後霊のようにして岸田首相を呪縛、アベノミクスからの転換を阻害しているというわけだ。

 しかし異次元金融緩和を見直さなければ、日米金利差から円安が今後も進んでいき、さらなる輸入物価高を招く恐れは十分にある。岸田首相や黒田総裁がアベノミクス見直しをするのか否かが注目される。

【ジャーナリスト 横田 一】

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