2024年07月16日( 火 )

必至のポートフォリオ大改造 日本株爆騰開始前夜か(中)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は9月14日号のマイナス実質金利の下でのドル高進行~米国のマイルドランディングを可能とする2大要因~」を紹介する。

2.最後に残った有望リスク資産、日本株式 

焦眉の本邦機関投資家ポートフォリオ大改造、日本株にウェイトを

 このように世界的金利上昇と債券のボラティリティの高まりを所与のものとすれば、外国債券にウェイトを置いてきた日本の銀行、生保、年金などの機関投資家のポートフォリオは大改築が必要になってくるのではないだろうか。 

 日本の銀行・機関投資家の資金運用はかつては国債投資主体であったが、2013-14年の日銀異次元の緩和、GPIFの運用改革以降、外国証券をリターン追及のためのリスク資産の中枢に据えてきた。図表6はGPIFのポートフォリオ推移だが、アベノミクスの一環として始められたGPIF改革により、外国債券、外国株式、日本債券、日本株式各々1/4の構成にシフトしたことがわかる。 

 改革直前の2012年度から2021年度までの10年間では総資産年平均6.6%の高リターンが実現し、収益累計は105兆円と、運用資産(197兆円)の過半を占めるという良好な成果がもたらされた。資産クラスごとの収益率をみると、日本債券1.0%、外国債券5.6%、日本株式10.8%、外国株式15.4%となっており、2013-14年の改革が功を奏したことがわかる。日銀の異次元の金融緩和QQEは、これらGPIF、ゆうちょ銀行をはじめとする日本の金融機関・機関投資家が保有していた国債を肩代わりし、それらのポートフォリオリバランスを可能にしたという点で、大きな役割をはたした。

図表6: GPIFのポートフォリオの大転換/図表7: 日本国債の主体別保有比率

 しかしこれからも、外国債券、外国株式、日本債券、日本株式各々1/4の構成のままでよいとは限らない。そこには深い戦略的洞察が必要である。そもそも大幅な円安と為替変動、外国株式急落により外貨主体のリスクテイクの問題がにわかに強まっている。 

外貨資産投資、日本債券投資はにわかにリスクが高まった

 以下3点はほぼたしかだろう。

i. 外貨資産は、安定収益を狙うには為替変動があまりにも大きい、また為替ヘッジコストが恒常的に高くなり手が出せなくなっている 
ii. 日本国内債券の金利リスクはYCCの出口が意識されるにつれ、いやがおうにも高くなる 
iii. バリュエーションと収益モメンタムから見た国内株式の優位性が突出する 

図表8: ドルヘッジコスト急上昇、米債投資妙味喪失

 銀行・機関投資家の間で資金運用対象の中心に日本株式を据えざるを得ない時代がきつつあるのではないだろうか。銀行の場合資本規制、生保の場合ソルベンシーマージン規制があり、リスクウェイトの高い株式投資はしにくい状況もあるが、それでも戦略的対応の余地はあるだろう。なお自国国債をリスクウェィトゼロとするバーゼル資本規制は、現実にそぐわず、修正されるべきではないだろうか。

企業収益、日本のみアップトレンド

 2023年にかけて日本株式は世界最高のパフォーマンスが期待される。第一に日本経済と企業業績が世界で最も堅調と予想される。2023年の経済見通しは日本が先進国のなかで最も高くなると予想されている。IMFは7月時点で(米国1.0、ユーロ圏1.2%、日本1.7%)、OECDは9月時点で(米国0.5、ユーロ圏0.3%、日本1.4%)と予想している。日本経済は、①世界的金融引き締めのなかで緩和基調が維持されていること、②コロナパンデミックに対する過剰反応から最も経済の落ち込みが大きかったが、その反動(リベンジ消費など)が期待できること、③円安のプラス効果が発現すること、などが予想されるからである。ことに円安の波及効果は甚大となるだろう。超円安により日本はかつての高物価国から新興国並みの低物価国となったが、低物価国日本へと世界の需要が大きく集まり始めている。まず輸出競争力が高まり輸出数量が増加し始める。また輸入品を国内製品に代替することが起きる。かつての超円高の時代に日本企業は海外に工場を移し、国内需要は安い中国品に蚕食されたが、今その逆のことが起きつつある。割安になった日本で商品を調達し海外へと転売する越境EC(イーコマース)が活況を呈している。この日本への需要集中はまだ始まったばかりであり、これが奔流のように力を増していくことは疑いない。 

(つづく)

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(後)

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