2024年12月22日( 日 )

「餃子の王将」社長射殺事件に急展開 黒幕に迫れるか(前)

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 中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東(おおひがし)隆行さん(当時72)が2013年12月、京都市山科区の本社前で射殺された事件は、一時は迷宮入りが囁かれていたが、ヒットマンが逮捕された。指示されたとされる黒幕に捜査の手が伸びるかが最大の焦点だ。

工藤会系組幹部を逮捕

お金と逮捕 イメージ    事件は13年12月19日午前5時45分ごろ、京都市山科区の(株)王将フードサービス本社ビル前で発生。大東隆行さんが駐車場に乗用車を停めて降りた際、胸や腹部に計4発の銃弾を受け、同6時ごろ現場で失血死したとみられる。

 あれから9年余。事態が動いた。

 京都府警山科署捜査本部は10月28日、特定危険指定暴力団・工藤会(福岡県北九州市)の二次団体・石田組(福岡県春日市)幹部の田中幸雄容疑者(56)を殺人容疑で逮捕した。別の銃刀法違反事件で実刑判決を受け服役していた田中容疑者を福岡刑務所内で逮捕。捜査本部がある山科署に移送した。

 田中容疑者は、工藤会系の元組員らと共謀して08年1月17日、福岡市博多区下川端の路上で、大手ゼネコン大林組の社用車に拳銃で弾丸4発を発射し、フロントバンパーなどを壊した。従業員3人が乗っていたが、けがはなかった。

 銃刀法違反(発射)と器物損壊の罪に問われた田中被告に対する判決公判が19年11月6日、福岡地裁であった。足立勉裁判長は懲役10年(求刑12年)を言い渡した。

 足立裁判長は、田中被告が実行役として犯行に関与したと認定。直接の動機は不明としながらも、自分たちの利益のために大林組を威迫する意図がうかがわれ、「反社会的な犯行として厳しい非難に値する」と述べた。(朝日新聞デジタル19年11月6日付)

不適切取引と事件との関連についても捜査

 各メディアが、餃子の王将社長の大東社長の殺人容疑で、工藤会系幹部、田中幸雄容疑者の逮捕を大きく報じるなかで、産経新聞地方近畿版産経WEST(22年10月28日付)の『王将社長射殺、不適切取引も本格捜査へ「経営実態、動機に影響」との記事に目が止まった。

 京都府警と福岡県警の合同捜査本部は28日、同社の第三者委員会が指摘した外部の特定企業グループとの不適切取引についても捜査すると明らかにした。
府警の増田茂雄捜査1課長は「大東さんの社長という身分は動機に影響してくると考えている。経営実態や不適切取引との関連性はこれから捜査で解明したい」と述べた。

 府警は一連の不正取引と事件との関連の有無についても捜査するという記事だ。全容解明に向けて、事件は重要な局面を迎えた。

260億円が流出し、170億円が未回収

 王将フードサービスは16年3月29日、第三者委員会(委員長・大仲土和弁護士)の調査報告書を公表した。それによると王将創業家と知人や、その関係企業との不適切取引を繰り返していたという。

 第三者委の報告書によると、知人とは王将創業者の加藤朝雄氏が1977年ごろに知り合った。加藤氏は建築関係の許認可をめぐる口利きなどを依頼していたという。

 不適切な取引が始まったのは加藤氏が死去し、代表権が長男の潔氏と次男の欣吾氏に移った後の93年ごろ。同社は知人や知人の関係企業計7社との間で、多額の貸し付けや不合理な不動産売買などを繰り返し、相手側に総額約260億円が流出した。このうち約176億円分が回収されないままという。

 同社はこれらの取引などを理由に2001年3月期に452億円の有利子負債を計上するなどして、経営危機に陥った。00年に加藤氏の妻の弟である大東氏が社長に就任して立て直しを図り、不動産取引で取得した不動産の売却、貸付金の債権放棄を進めて06年9月までに清算した。

 ただ、知人側との接点は残り、同社側はその後も不動産賃貸契約をめぐる関与などを依頼していた。同社は東証一部上場を目指していたが、この不透明な関係が東証に指摘され、12年いったん断念。13年の東証・大証統合で東証一部に移行した。

 同社はこれらの取引をめぐって12年から社内調査を実施。13年11月13日付で報告書をまとめたが、公表を見送っていた。大東さんが殺害されたのは、その翌月だった。

 第三者委は、大東前社長の射殺事件を受けて、反社会的勢力と同社との関係の有無を調べるために16年1月に設置された。

 京都府警は、創業家と知人との不適切取引が、事件の解明につながるとして本格的な捜査に乗り出すことにしたのである。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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