2024年12月24日( 火 )

新たな金融恐慌の幕開けか、ギリシャ危機の内幕(後)

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国際政治経済学者・参議院議員 浜田 和幸 氏

parthenon これまで、外部勢力の大きな圧力の下、こうした実態が覆い隠されてきたわけであるが、チプラス首相のもとで初めて、国際金融機関による横暴な行いの数々が明らかにされた。楽天的なギリシャ国民も、ついに反旗を翻す動きが具体化したのである。同首相は、共産主義青年組織の出身であり、自らが率いる急進左派連合の強い支持を得て、マネー資本主義に敢然と立ち向かったというわけである。

 日本のメディアもそうであったが、国民投票の直前まで賛成票と反対票は各々40%で拮抗しているとの報道が流されていた。こうした報道も、実は情報操作のなせる技だったことが明らかになった。なぜなら、実際には60%を超える国民が反対票を投じたからである。長年にわたり、IMFや欧州中央銀行にいいように翻弄されてきたとの思いが、ギリシャ国民の間でついに爆発した結果であろう。

 今回のようなドラスチックな投票結果が出ていなければ、ギリシャは真綿で首を絞められる運命をたどったかもしれない。すでに、ユーロ圏や欧州連合そのものにひびが入ったとの見方もあるが、「ギリシャ一国の経済危機を救えなくて、欧州連合の意味があるのか」といった声も同時に出ているのである。その代表格が、元イタリア首相で欧州連合の議長を務めたプロディ氏であろう。なぜなら、「ギリシャのような小国の問題をEUが解決できないのであれば、欧州の一体化など無意味ではないか」とまで公言しているからだ。

 加えて、ロシアのプーチン大統領までもが、「ここまで事態を放置してきたEUの責任は重い。加盟国の危機を未然に防ぐのが連合体の使命のはず。それができないなら、経済統合の意味がないのでは」と外野席から癖玉を打ち込む有様。まさに、イギリスのEU離脱の可能性も含め、欧州統合経済の行方が案じられる所以である。今後もギリシャとEUの交渉から目が離せない。

 一方、今回のギリシャの金融危機をはるかに上回るような地殻変動が起こりつつあるのも事実だ。現在、史上最大のバブル崩壊の可能性が中国で発生している。これは日本にとってギリシャより何十倍も大きな脅威となるに違いない。なぜなら、乱高下を繰り返す中国の上海株式市場では、この3週間で2兆3,600億ドルもの株価損失が発生。これは昨年のギリシャのGDPの10倍以上の経済的危機といえるだろう。中国政府は必至の市場介入を繰り返しているが、どこまで維持できるかは微妙だ。その意味では、15年は世界大恐慌の幕開けとして、将来の金融破綻の歴史に記憶されることになる可能性が高い。

(了)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

 
(中)

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