脊振の自然に魅せられて2015(4)
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「脊振の自然を愛する会」(福岡市早良区、池田友行代表)の池田友行代表は、背振の環境保全活動を行ないながら、美しい自然の数々をカメラに収め、写真集「脊振賛歌」を発行した。続編が待たれるなか当連載ではフォトエッセイとして、背振の魅力を紹介する。
『カキラン』に再び会えた
夏の訪れを告げる蘭の花
7月になると、日照りのよい林道沿いに鮮やかな黄色の花『カキラン』が咲いてくれていました。背の低い笹の中にまみれて、元気に咲いて、汗ばんだ私を出迎えてくれたのです。廻りにはウツボグサも咲き、夏の訪れを知らせてくれる蘭の花です。
そんなカキランを、いつしか忽然として見ることができなくなりました。おそらく盗掘でしょう。毎年、毎年、訪れてみましたが見かけることはできなかったのです。開花時期を間違えたのかと思いましたが、過去の記録を見てもやはり7月初旬に開花、と記してあります。そのようななか、今年になって『脊振の自然を愛する会』会員のTさんより、「脊振山周辺に湿原があり希少動植物が見られます」との一報を受けて、一緒に現場を見に行くことにしました。10年以上前に小さな水たまりがあり、そこに湿原独特の花が咲いているのを思い出しました。――あそこかなー。
しかしTさんに案内されたのは人が寄り付かない場所でした。久しぶりの対面に感動
湿原の植物はシラヒゲソウ、サギソウ、吾亦紅(われもこう)、ミソハギなど、陸地では見られない花が咲いてくれます。
湿原といえば佐賀県の樫原湿原がよく知られています。ここにも撮影で良く通いました。それとは別に20年前、広島に赴任したおり島根県と広島県の県境の191スキー場から入り込んだ八幡湿原にもよく撮影に通ったものです。脊振山系の湿原に、Tさんとは私は長袖、長ズボン、長靴、軍手、帽子とマダニや虫対策をして、湿原に足を踏み入れました。すると黄色いカキランが沢山咲いるではありませんか。数年ぶりのご対面でした。
希少なトンボ類もとんでおり、久しぶりに湿原の生き物たちに会えて感動しました。
その後、他の会員を案内し、自身もまた撮影に訪れました。生き残ってくれていた
脊振山系の渓谷のコケイランの撮影終えて、以前カキランが咲いていた林道沿いを歩いていると、カキランが1本見つかりました、「生き残っていたのか」と、私はカキランに思わず声を掛けました。少し歩いてみると他に場所でもカキランが1本、他の場所に1本、合計3本も咲いていました。生き延びてくれたカキランに生命力を感じました。
どこの山でも蘭系統の植物、とくにエビネ類が盗掘の対象になっています。自宅用や園芸店に持ち込む様です。ありのままの姿が一番よい、そこに見に行ってこそ価値があると思います。雨上がりや、早朝に露を含んでいる植物の姿は実に神秘的です。そんな姿を私は追い求めています。
『感動の一瞬が素晴らしい写真を生む』、私の座右の銘です。【やまぼうし】
<池田友行氏プロフィール>
福岡市早良区在住。1944年3月生まれ
西南学院大学ワンダーフォーゲル部OB。ソニーマーケティング(株)退職後、2008年より早良区と共働で、脊振山系道標設事業や脊振清掃登山に取り組み、中心的役割を果たす。
福岡市早良区の野河内渓谷整備に従事中。
「脊振の自然を愛する会」代表
早良区役所主宰の『早良みなみ塾』自然環境分科会代表
写真集『脊振讃歌』著者―やまぼうし関連記事
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