孫正義氏のビジネスの原点、米ヤフーが消える(後)
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投資家、孫氏はIoT革命に勝負に打って出る
今年8月、孫氏は60歳を迎える。初めて人生計画を反古にした孫氏が、何をやるかに注目した。果たせるかな、ソフトバンクグループは16年7月、半導体設計専業の英アームホールディングスを買収した。買収総額は3兆3,000億円。これで孫氏の意図がはっきりした。あらゆるモノがネットワークにつながるIoT事業をターゲットにしたということだ。
孫氏はイチかバチかの大博打を打てる勝負師である。IoT革命を目の前にして、勝負師の血が騒いだ。インターネット革命の入口で米ヤフーへの投資に勝負を賭けたように、IoT革命のトバ口で英アーム社の買収に勝負を賭けたのである。
ソフトバンクグループが6月21日に東京・千代田区丸の内の東京国際フォーラムで開いた株主総会は、孫氏が事業家から投資家に本卦還りを宣言したことに大きな意味をもつ。サウジアラビアなどと5月に発足させた10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に関し、孫氏は「加速度的にグループを強化するために設立した」と語り、出資先などグループ企業を5,000社規模に広げる構想をぶち上げた。
この構想について2つの記事が目にとまった。1つは日本経済新聞(6月22日付朝刊)。
〈ソフトバンクグループが21日に東京都内で開いた株主総会で、昨年9月に約3兆3千億円で買収した英半導体大手アームホールディングスについて、社外取締役の永守重信・日本電産会長兼社長が「私なら3千億円しか出さない」と異論を唱えた。ともに企業買収が豊富な永守氏と孫正義社長の意見が食い違った形だ。〉
孫社長は、アーム社について、「将来振り返るとしたら、一番カギになった買収になる」と自身の判断の正しさを強調したという。
もう1つは、社外取締役であるカジュアル衣料ユニクロを展開する(株)ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の日経ヴェリタス(6月18日号)でのインタビュー。
〈「彼には投資の才能があることは分っている。だが、同じ才能を生かすなら投資家ではなく実業家として成功してもらいたい。本業に徹してもらいたい。孫さんはグループ会社を5,000社にすると言っているが、僕は20~30社にしてそれぞれが何兆円という売上高を持つ会社にしてもらいたいと思う。そうじゃないと実業家ではなく投資家になってしまう」〉
孫氏の最高の理解者である2人の社外取締役が、期せずして、投資家・孫正義に異議を唱えたのである。ソフトバンクグループの時価総額は10兆円を超えた。盟友たちの懸念をものともせず、60歳代になる孫正義氏は時価総額20兆円に挑戦するする。英アーム社が実現させるであろうIoTビジネスの輝かしい未来に勝負を賭けたのである。
(了)
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