出光興産が公募増資、創業家を封じ込めるカードを切った!(前)
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出光興産(株)の経営陣が、ついに増資カードを切った。昭和シェル石油(株)との合併に反対する創業家を追い詰める強硬策だ。経営陣はこれまで「創業家の説得を優先する」と言い続けてきたが、創業家との全面対決に踏み切った。創業家は増資に猛反発している。経営陣と創業家の対立は、最終局面を迎えた。
創業家の持ち株比率を26%に減らす増資策
出光興産(以下、出光)は7月3日、公募増資による新株発行を実施すると発表した。早ければ20日にも、発行済み株式の3割にあたる4,800万株を新たに発行し、1,385億円を調達する。資金は、ベトナムで建設中の製油所の運転資金や有機EL材料の開発費用に充てる。また、昨年末に昭和シェル石油(以下、昭和シェル)株取得で膨らんだ借入金の返済にも使う。
公募増資の最大の狙いは、昭和シェルとの合併に反対している創業家の持ち分比率を減らすことにある。創業家は、出光昭介名誉会長をはじめ一族や資金管理会社を通じて、出光株の33.92%を持つ。合併には臨時株主総会で出席株主の3分の2の賛成が必要なため、創業家は合併を拒否できる。今回の新株発行で創業家の持ち分比率が26%台に低下すれば、合併に向けて大きく前進することになる。
創業家の代理人の鶴間洋平弁護士は7月4日、「株式比率の低下を目的とする不公正な増資だ」として、東京地裁に新株発行の差し止めを求める仮処分を申し立てた。経営陣は5日、「経営の支配権維持が目的だとする創業家の主張は誤り」と反論した。
地裁が仮処分を認めれば、経営陣は増資カードを切れなくなる。地裁が仮処分申し立てを退ければ、経営陣は昭和シェルとの合併へ向けて一気に進むことができる。経営陣は創業家以外の株主から信任を得た
出光の経営陣が強硬策に打って出たのは、創業家の影響力が低下してきたことにある。
昨年6月の株主総会では、創業家の代理人(当時)の浜田卓二郎弁護士が乗り込み、昭和シェルとの合併反対を表明。月岡隆社長らの再任案に反対した。拒否権を持つ創業家が反対しているため、合併に向けての臨時株主総会を開くことができず、2017年4月に予定していた合併時期を延期した。
今年の株主総会に先立ち、創業家の新しい代理人となった鶴間洋平弁護士は6月5日、創業家側の総会対応方針を明らかにした。会社側が提示した12名の取締役候補のうち、5名の取締役の選任(社内取締役4名、社外取締役1名)に反対する。6月29日に開いた株主総会では、月岡隆社長らを再任する人事案が可決した。月岡社長の賛成率は61.1%。前年の賛成率は52.3%で、過半数をわずかに上回る僅差だった。今年は賛成率が大幅に改善した。創業家は、出光の石油を売る特約店や販売店の経営者たちの賛同を得ることができなかった。創業家以外の株主のほぼすべてが昭和シェルとの合併に賛成している、と経営陣は自信を深めたのである。
(つづく)
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