調理師不足!危機に瀕する長崎の『食』のおもてなし
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調理師育成の強化は急務
「調理師が足りない!」。長崎県内の宿泊施設や飲食店から、そうしたSOSが発せられている。学校法人川島学園が運営する九州調理師専門学校(長崎市)の川島壽元校長は、「観光で長崎に来られた方が、一番喜ぶのは『食』。地元で調理師を育てていくことを強化しないとリピーターにつながらない」と、警鐘を鳴らす。
人口減少が進むなか、地域経済活性の方策として交流人口の拡大が叫ばれている昨今、長崎県では、長崎市に8つの構成資産がある「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」が今年7月6日に世界文化遺産に登録。来年には、「長崎の教会群とキリスト教関連資産」が、世界文化遺産の審査を控えている。世界遺産効果によって観光客が増加していると見られており、また、クルーズ船の入港数は、2014年に過去最高となる92隻を寄港するなど、長崎県の交流人口の拡大において明るい話題が多い。
そのようななか、昨年観光における重要なファクターである『食』が危機的状況にある。食の安全性への関心が高まっている今、食品衛生法を学び、比較的早く即戦力となりうる調理師専門学校の卒業生は、とくに『食』のおもてなしを重視するホテルや料亭、レストランなどの引き合いは強い。しかし、「多くの若者が、都会の専門学校に行く傾向があります。卒業後は、そのまま都会で就職してしまうことが多いのです」(川島校長)という。
九州調理師専門学校は1970年に設立。「当時、長崎になかった調理師専門学校を作ろう」と、川島校長が25歳という若さで、諸谷義武長崎市長や西岡武夫代議士、長崎の著名な料理人たちなどの後押しを受けて開校した。以来45年間、数多くの調理師を世に送り出してきており、現在では、「毎年、卒業生の子どもたちが入校するようになりました」(川島校長)という。
現在、『食育』に重きを置く同校では、減反で使われていない田を借り、米づくりの実習でを行うなどのカリキュラムを用意。最近では、イスラム教信者のために「ハラル」をカリキュラムに導入する準備を行っている。変化する時代のニーズに応えうる『食』のおもてなしを追求している。そのほか、川島学園は2004年に製菓衛生師を育成するエコール・ド・パティスリー長崎を開校。介護食士など、幅広い人材の育成を行っている。
現場が人件費の安い若い人手を求めるあまり、経験豊富なベテランの料理人があぶれているという現実もあると聞く。増加する観光客に対応するには、『食』における雇用のミスマッチの解消が急務だ。長崎市では、国際会議や学会などの受け皿となるコンベンション施設の建設を田上富久市長が目指しているが、ハード面の整備が検討される一方で、同じく重要なはずのソフト面の充実がおろそかになってはないだろうか。
【山下 康太】
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