複雑なニーズに対応するマンション管理支援ネットワーク長崎(後)
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円滑に合意形成へ
――中心部における修繕や建替えの需要に対して、どのような対応が求められるのでしょうか。
田口 まず、どういった人材が必要とされているかというと、都市計画事業に携わった経験がある人ですね。前例がないため、スムーズにいくためのスタイルが決まっているわけではありません。阪神淡路大震災の後、2002年に施行された「マンション建替え等の円滑化に関する法律」(マンション建替え円滑化法)は、建替えの際に、それまですべての区分所有者の合意が必要となっていたものを5分の4以上の賛成としました。建て替えを円滑に進めるための条件の緩和と言えますが、そうした関連法に精通し、適切なアドバイスが行える人材が必要となるでしょう。
――震災では所有者が行方不明になっているケースもあって法律が作られたんでしょうね。震災がなくても建替えの際は、区分所有者の合意形成では苦労するのではないでしょうか。
田口 そうですね。マンションに住んでいる人にもいろんな方がいらっしゃいます。なかには、高齢の方で、「建替えせず、今のままでいい」と仰る人もいるでしょうし、金銭的余裕も個々に違います。それぞれの方にメリット・デメリットを説明し、納得していただけなければなりません。また、建替えに至るまでも、築14〜15年で屋根や外壁、防水の修繕、築25〜30年では配管・電気設備のメンテナンスが必要となってきます。ちょうど人間の身体と同じですよ。修繕とは、資産価値を上げるための投資でもありますから、何もしないというのは不利益を生むことなんです。我々のように、マンション管理士を窓口とした専門業者のネットワークがあれば、相談への対応から必要となる業者への紹介・依頼、管理組合の合意形成まで円滑に進めていくことができます。――古いマンションで苦労されることはありませんか。
田口 古いマンションになってくると設計図がなかったり、図面が古くなってボロボロになっている場合もあります。私は設計士として、図面がなかったり一部しかないような建物の三次元化した設計図の作製を行っていますが、この効果は電子化することで将来まで劣化しないことと、三次元の設計図なら、専門知識がない方も建物の仕組みをイメージすることができます。「マンション管理支援ネットワーク長崎」の会員企業のなかには、赤外線調査で外壁診断を行う業者さんも入っており、自分たちの住んでいるマンションの現状を知りたいというご要望も今後、増えてくるかと思いますが、迅速に対応していければと思います。——長崎ならではのマンションの不具合はありますか。
田口 長崎市には土地の有効利用を考え、また、景観がいいということで、斜面地に建つマンションが多くあります。その1つの形として背面壁を土に接したものがあります。それは、通風が良くないことと、土に接している部分が温度差で結露が起きやすいなど、見る側には良いが住む側には疑問なマンションです。また、結露は形状に関わらずマンションにおける問題のひとつです。結露を防ぐためには、寒冷地ではペアガラスや樹脂サッシを用いてありますが、今後は寒冷地以外でも標準化していくと思います。――最後に、マンション管理支援ネットワーク長崎の今後の展開についてお聞かせください。
田口 今は管理士会が情報源となり、そのアシストを行うとともに、個々に紹介を受けて契約を行うようになっていますが、世間に認知されるようになれば、組織が契約の母体になっていくようになるという道もあると思います。根本的には、「マンション等における良好な居住環境の確保を図り、もって市民生活の安定向上と市民の経済の健全な発展に寄与するための活動を行うこと」という目的に沿った形で、相談機関として存在できるのではないかと思います。現在も会員募集中です。目的に賛同していただける事業者の方のご参加をお待ちしております。(了)
【聞き手・文:山下 康太】<お問い合せ>
マンション管理支援ネットワーク長崎
所在地:長崎市宝町5-5 HACビル7階
TEL:095-865-9676
FAX:095-865-9683関連記事
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