2024年12月22日( 日 )

建設産業を取り巻く状況(中)

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要点クローズアップ一般管理費の引き上げ

kensetu_img2 全国大手ゼネコンと比較して企業規模が小さな中小建設業にとって、売上に占める一般管理費の割合は高い。そのため社員の待遇改善や建設機械保有で発生する減価償却費計上には、一般管理費率引き上げが必要だった。そのため国土交通省が、一般管理費率引き上げなどを柱に土木工事積算基準を改定することに対して、地方建設業界から歓迎の声が相次いでいる。ただ、これまで予定価格の構成要素のうち、工事原価に相当する直接工事費や間接工事費とは異なり、一般管理費率引き上げはどれだけ要望しても実現しなかっただけに、悲願だったことが現実化したかたちだ。
 中小建設業主体で構成する地方建設業界にとって、一般管理費率が「7.22%−14.38%」から「7.41%-20.29%」に引き上げられることは、収益の回復・改善とともに、これまで賃金抑制を続けてきた元請企業社員の賃金アップにつながることを意味する。
 全国大手ゼネコンなど規模が大きい企業の売上に占める一般管理費率が5%前後であるのに対し、中小建設業は16、17%程度と高く、これまでは社員の処遇改善や建設機械購入など設備投資になかなか踏み切れなかった。
 工事品質の担保・確保を目的とした発注者にとって、予定価格の算定項目のうち、工事原価に直結しない一般管理費の基準引き上げは、工事品質と直接関係にないことなどを理由に対応が遅れていた。それが担い手確保・育成と適正利潤確保を新たな目的に加えた改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)が成立・施行されたことで、建設業界が大きな関門としてとらえていた一般管理費の積み上げが実現した格好だ。

 ただ一方で、1件当たりの予定価格アップにつながる一般管理費率引き上げは、域内の工事発注件数にも影響を与える可能性はある。中小建設業の多くは「件数を確保するよりも、1件の工事で利益を確保し、処遇改善で担い手を確保することを優先」で一致しているようだ。

(つづく)
【東城 洋平】

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