2024年12月22日( 日 )

建設産業を取り巻く状況(後)

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設計労務単価の引き上げ(2015年2月)

kensetu_img 新労務単価は、昨年10月に実施した公共事業労務費調査の結果をもとに設定。最近の労働市場の実勢価格を適切・迅速に反映し、例年の4月改定を2年連続で早めた。社会保険の加入徹底の観点から、必要な法定福利費相当額も引き続き盛り込んだ。全国全職種平均の金額(加重平均、1日8時間当たり)は1万6,678円。2000年度の水準を上回り、ピーク時である1997年度の約87%の水準となった。

 地域別では東北のほか、そもそもの賃金水準が低い北陸、九州の伸び率が比較的高かった。職種別では躯体系の伸びが目立ち、とび工と鉄筋工は5.6%増、型枠工と左官は5.2%増となり、いずれも全職種平均を上回った。
 被災3県の全職種平均の金額は1万8,224円。伸び率は岩手が5.0%、宮城が4.9%で、福島は全国トップの8.9%の増加となった。福島の伸び率が突出して高いのは、復興事業の本格化への対応として、5%の上乗せを行う職種を7から37に増やしたため。これにより福島の上乗せ職種は岩手、宮城と同数になる。鉄筋工、型枠工、とび工、大工、左官、特殊作業員など、各種統計や市場単価資料からも継続的な上昇傾向が確認される37職種が上乗せ措置の対象になっている。

 近年の全国全職種平均伸び率の推移を見ると、13年4月に15.1%、14年2月に7.1%、15年2月に4.2%それぞれ増加した。13年度は法定福利費相当額の加算や入札不調状況に応じた補正など、政策的な部分が大幅増のきっかけとなったが、それ以降は同条件で純粋に実態が反映されたかたちだという。

 官民を挙げた処遇改善の取り組みなどが奏功し、上昇基調が継続していると言えるが、一部の下請企業などからは依然として、「労務単価が上がった実感が得られない」といった声も聞かれる。建設企業には適正な利潤を確保し、担い手に十分な対価を支払う取り組みの一層の推進が求められる。
 国交省としても今回の前倒し改定を踏まえ、建設業団体を通じて元請けから下請け、そして技能労働者へと適切な賃金が流れるよう改めて求める予定だ。

担い手3法改正

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 昨年5月に成立した「担い手3法」が15年4月1日、全面施行された。ダンピング対策を強化した改正公共工事入札契約適正化法(入契法)で、すべての公共工事入札で内訳書の提出が義務付けられる。同法に基づき、公共工事では施工体制台帳の提出義務も全工事に拡大される。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針に基づく発注事務もスタート。受注者の「適正利潤」確保が発注者の責務となる。

 入札金額の内訳書提出は初めて実施する自治体も少なくない。仮に発注者の提出要請に建設業者が応じなければ、「書類不備」として入札が無効になる可能性もある。内訳書の提出は、見積もり能力のない不良・不適格業者や見積もりもせずに安値で受注しようとする業者を排除する効果が期待されている。法改正を受けて今回初めて内訳書提出を求める自治体もあり、HPで内訳を記載するフォーマットを公開するなど、対応が進んでいる。また入札内訳書とともに、従来は下請金額3,000万円(建築一式は4,500万円)以上の工事で義務付けられていた施工体制台帳の提出もすべての工事で義務化される。これによって発注者は、比較的規模の小さい維持修繕工事の施工体制が把握できるようになり、下請企業の社会保険加入状況なども確認しやすくなる。

 昨年6月に施行された改正公共工事品確法に規定された「発注者の責務」を果たすための共通ルールとなる運用指針(1月30日決定)に基づく発注関係事務も本格スタート。適正な予定価格設定や歩切りの根絶、低入札価格調査や最低制限価格制度の活用、適切な設計変更などが、発注者が負う責務として求められるようになる。

(了)
【東城 洋平】

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