人手不足解消には若手と女性が安心できる産業へ(後)
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まずイメージを変えよう
――今後は、どうすれば人手不足の問題は解消していくのでしょうか。
蟹澤 一番身近な問題で言うと、保険未加入企業は求人票すら出せないので、そうなると若い人の目にはまず止まりません。工業高校の先生たちが建設業界に入れたいと一生懸命に企業を探しても、「求人票を書けない」という企業は実際にたくさんあるのです。保険未加入問題は、結局、そこに帰結します。私も講演などで、「まずは求人票を出せるようになりましょう」と伝えています。
今でも子どものなりたい職業として、大工が10位以内にあるわけです。「大きなものをつくりたい」と憧れる子どもたちはたくさんいますし、大人でも8割が「仕事はやりがいがある」と言っています。人手不足に陥る原因には、当然、賃金が安いとか休日がないという明確な理由がありますので、まずはそこを改善した方が良いです。そのうえで、将来的に子どもたちに建設業界へ入ってもらうためには、業界内部にいる人たちが「ずっと働きたい」と実感しなければなりません。建設業界に女性を入職させようという動きも出てきました。直接働いていただくのも大切ですが、その人の奥さんやお母さんなど、建設業界の内側にいる女性たちに「建設って良い産業だね」というイメージを持っていただく必要があります。そうしなければ、子どもたちは建設業界に入ってきません。
今まで、「建設は女には関係のない世界だ」と、業界内の男性たちは考え続けてきました。そういう人たちには、運輸業界をもっと見習おうと言っています。昔はこの業界も男社会でしたが、今ではすっかり女性が増えました。とくに宅配業は、主婦の人たちがいろいろな時間帯に勤められる制度があったりして、女性が働きやすい環境をつくる努力をしています。建設業も女性の活用を謳うのであれば、子どもがいる家庭の女性が短時間勤務できるような制度をつくるべきです。建設業といっても、丸一日かからない、1つの現場で1日2~3時間で済むような仕事もたくさんあります。建設は何も力仕事ばかりではありません。重機のオペレーターにはすでに女性がたくさんいますし、仕上げ工事なども女性の方が向いていると思います。そうした視点を持てば、女性の活用の可能性がものすごく広がります。
どんなに市場が縮小したとしても、建設業は絶対になくなりません。とはいえ、国内需要だけでは限界があり、いよいよ海外に出ざるを得ない状況でもあります。ただ、少なくとも、アジアでは日本のゼネコンが優位な競争力を持てるはずです。今でも技術力は世界一だと思います。
これまで建設は内需で内向きの産業と思われていましたが、最近では海外で活躍したいと考える若手が急速に増えてきました。まだまだアジアの市場は大きいですし、技術水準を見ても日本のゼネコンが活躍する余地は十分にあります。そのときに、若手が夢と希望を持てるようなビジョンを、今の世代でつくっておかなければいけません。(了)
【大根田 康介】<プロフィール>
蟹澤 宏剛(かにさわ・ひろたけ)
1995年、千葉大学大学院自然科学研究科で博士号を取得後、財団法人国際技能振興財団に就職。その後、工学院大学、法政大学、ものつくり大学での講師経験を経て、2005年芝浦工業大学工学部建築工学科助教授に就任。09年、同大教授。国土交通省の建設産業戦略的広報推進協議会顧問、社会保険未加入対策推進協議会会長、担い手確保・育成検討会委員などを歴任。◆建設情報サイトはこちら>>
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