2024年11月30日( 土 )

山上徹也容疑者への口封じ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「岸田内閣の被害者救済法案と関係者の要請との隔たりは極めて大きい」と批判した11月24日付の記事を紹介する。

世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)の高額献金問題などを受けて政府は被害者救済新法案と改正消費者契約法案の概要を示した。政府提案に対して一斉に批判の声が挙がっている。

全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は11月21日に、「政府案は実態に即しておらずほとんど役に立たない。正体隠しによる勧誘方法そのものを規制すべきだ」との声明を発表。

教団の信者を親にもつ「宗教2世」らは11月23日、東京都内で記者会見し、政府が示した法案の概要では救済される範囲が限定的などとして「被害者の声を聞いたうえでの再検討を求める」と訴えた。

記者会見に参加した宗教2世の被害者は、概要が、個人を「困惑」させた場合に寄付の取り消しができるとしていることについて、「信者は使命感から献金しており、法案の概要は実態(の問題点)から懸け離れている」と指摘し、「教団側に『これなら安全ですよ』と指南しているようで『統一教会救済法』だ」と批判した。

共産党は政府提案の法案で「霊感などの知識により、個人の不安をあおったり、現在の不安に乗じたりして献金が不可欠だと告げることを禁じる」としたことについて、「正常な判断ができない状態に乗じた勧誘を禁止する」ことを盛り込むべきとする党の考え方をまとめた。

共産党は、マインドコントロール下では、「献金が不可欠だ」と告げることなどが多いわけではなく、「困惑させた場合に寄付の取り消しができる」としただけでは救済を図るうえで大きな問題があるとして「正常な判断ができない状態に乗じた勧誘を禁止する」などとすべきだとしている。

また、政府の概要が、法人が献金を勧誘する際、借金させたり、家を売らせたりまでして資金の調達を要求することを禁止するとしていることについて、工場や田んぼといった事業用資産や生命保険金など、重要な個人資産の処分も含むべきだと指摘している。

岸田内閣は今国会で被害者救済法を制定するとしているが政府提出案と関係者の要請との隔たりは極めて大きい。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、政府案が「法人」への寄付を規制の対象としていることについて、法人格がない「団体」や「団体の幹部個人」に対する寄付も過去に行われているなどとして対象に加えること、「正常な判断ができない状態にあることに乗じた」勧誘を規制対象とするべき、と主張している。
この点は共産党の主張とも重なる。

形式的に立法が行われても実効性をともなわないなら意味がない。被害者救済のための立法が被害者の救済につながらないなら立法する意味がない。岸田首相がこの問題に本気で取り組む考えを有するなら被害者や弁護士連絡会の指摘を踏まえて法案修正に応じるべきだ。


※続きは11月24日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「山上徹也容疑者への口封じ」で。


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