【福岡市長選】市議と本紙記者との匿名座談会(3)
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20日に投開票された福岡市長選は、現職の高島宗一郎氏が過去最多得票数を更新して4選をはたした。(株)データ・マックスでは現職の福岡市議会議員を招き、行政記者2名と座談会を実施。動かなかった保守票、野党共闘の功罪、市民の受け止め方などを語りつくした。
※出席者 A:行政記者 B:現職市議 C:行政記者
やりたいことだけやる?高島市長
A記者 取材で話を聞いたなかで、現職が市長選で団地、つまり市営住宅を回ったことがありましたが、それに親近感を覚えた人がいたことが印象的でした。
B議員 団地に行って訴えただけで?そもそも現職は市長だから、どこにでも行かないといけない。
A記者 市長は、地域に入り込んで訴えるということをしないですよね。
B議員 祭り上げられる、「偶像」というのはすごいですよね。地下鉄の延伸問題でも、橋本から姪浜の区間にしても、「空港国際線まで接続する」とおっしゃったにしても、国からは一銭も出ない。全部、市単独の出費で行わないといけないのです。
A記者 地元民放の番組に市長が出演されて、日本地下鉄協会の会長であることを強調されていましたが、「だからといって地下鉄延伸が進むのか?」と思いながら見ていました。
B議員 「地下鉄協会の会長だから、好きなように地下鉄を掘っていい」ということにはなりません。ちゃんとみておかないといけないことですが、西鉄雑餉隈駅が高架化しましたよね。高架化した西鉄大牟田線は一回井尻で地上に下りて、そして大橋でまた高架になる。住民からの井尻の高架化の要望に対して、「それは国の要件を満たしていないから」といって動いていません。
A記者 井尻の方々からは、高架化の要望がすごくありますよね。
B議員 それに対しては、「国の補助が出ない高架化事業はできないんですよ」という。西鉄の貝塚線のことで、同じような話があって。「費用対効果の問題でやらない」と議会で報告しました。そこまで言った人が、「地下鉄の延伸はやる」というのは矛盾しないかと。雑餉隈で高架にして、また井尻で地上に下りるというのは、はっきりいって馬鹿だと思う。上げたものを下ろすなんて。その一方で、「自分のやりたいことはやる」とかありえないです。いま福岡市内で家を建てられない方が、貝塚線の先で家をどんどん建てられているわけですから。その方々は福岡に働きに来られて、住民税は新宮や糟屋郡に収められるかもしれないけれど、それでも勤めに出てこられるのは福岡市なのですから。ユーザーが増えることになります。沿線の価値はどんどん上がっていきますよ。
A記者 東京は、都心から郊外に乗り入れしています。東京メトロにしても、他の私鉄にしてもね。
B議員 それはあなた(市長)のいう優先順位としてどうなのか、と。天神ビッグバンにしても、テナントが空室だという状況が出てきていますよね。それは対応しないといけないはずです。もう少し企業を呼び込もうとしないといけない。そうでないと、費用対効果としてかなり説明が厳しいと思います。では何百億円かけて企業誘致して、それを何年で取り戻すのか。もう1つ、福岡空港の在り方、今の場所で空港はいいのかという問題。これは思い付きでは絶対できない話だと思います。いくら史上最多得票だったとしても、これらの問題についての姿勢を明らかにして選挙に出たわけではない。最近、山の登り方を覚えたといわれているそうですが、私は彼の山の登り方がどう変わったのか全然わからない。「俺がやりたいようにやる」。時間かけるか、かけないかだけの話です。
C記者 ただ、天神ビッグバンや博多コネクティッドをやって税収もあがり、そこから福祉に使えるとわかりやすく説明してくれるんですよね。市長は自分の実績を自慢していわない。自慢したように聞こえない。マイクパフォーマンスで大事なのは、マイクの使い方ですよ。高島さんは、がならないところがいいですね。田中さんも演説は聞きやすかったですよ。現職は、今後の夢をもたせてくれる。市長に再選されたら「今後は税収をこう使っていきますよ」と未来を語る。それが「種まき」ということだろうと思いました。
A記者 高島市長にとって今有力な中央の政治家、後ろ盾になってくれる政治家がいないからですね。安倍元総理が政権を担っていたときは、安倍さんの権勢を笠に着たような言動が目立ちました。
B議員 今回の選挙で、「俺はもう後ろ盾は必要なくなった」と思っているはずですよ。これが彼が今回得た感想ではないか、と思うんですよね。次の選挙では、自民党市議団も長老議員が大勢引退されます。そうなると、来期の議会情勢には大きな変化が訪れると思います。相当現職にとって厳しい議会運営を強いられるのではないでしょうか。毎回みんなが喧嘩するとは思いませんが……。
A記者 若手、中堅の議員の動向はいかがでしょう。
B議員 多くは是々非々と思います。過疎地を選挙区に有する方は、執行部との関係においても慎重に動かれると思います。
A記者 現職の「対立点、敵味方を明確にする」というやり方は、国政でいえば小泉政権以降のやり方だと思うのですけど。
B議員 すべての元凶が、小選挙区制度にあると思います。公認権を握った党の総裁にみんな右へならえをしておかないと、次の選挙で公認を貰えないかもしれない。あのころから、政治を見極める目がどんどん退化していったように思います。
(つづく)
【近藤 将勝】
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