2024年07月16日( 火 )

隠れ反日政治屋一族の黄昏

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「政治屋稼業に食い物にされないために、国民はたしかな野党の確立を目指せ」と訴えた12月13日付の記事を紹介する。

 衆議院議員の岸信夫首相補佐官が次期衆院選に立候補せず、引退する意向を地元後援会幹部に伝えたことが12月11日に報じられた。読売新聞は、岸信夫氏が12月11日に山口県岩国市での後援会幹部の会合に出席し、自身の健康状態を理由に、「このあたりで信千世に譲りたい」と述べたと報じた。岸信千代氏は31歳の岸信夫氏長男。

 このことについて批判が噴出している。私も報道を目にした瞬間に強い疑問を感じた。違和感の主因は「譲りたい」の表現。選挙区の地盤を長男に譲りたいという意味だろうが、選挙区は岸信夫氏の所有物でない。それにもかかわらず、選挙区を自分の所有物であるかの如くに扱う「感覚」が問題視される。

 岸氏は「譲りたい」は、「自分の選挙基盤を譲りたい」の意味であって「選挙区を譲る」という意味ではないと反論するだろう。しかし、与党政治家が選挙区そのものを自分の所有物と化して、その所有物を相続するかのように自分の子に引き継ぐことが常態化している。代議士という地位を世襲することが当然との感覚が保持されている。

 憲法が定めているのは主権者である国民が正当に選挙された代表者を国会に送り込むこと。誰を代表者として国会に送り出すのかを決めるのは主権者である国民だ。現職の国会議員がその地位を自分の子に譲り渡すものではない。しかし、現実には国会議員という職責が世襲によって特定の家系の所有物と化している状況が広がっている。

 国会議員の職責は巨大な利益を生み出す職業と化している。国会議員の職責を所有物として占有する特定の家系が、巨大利益を生み出す国会議員の職責を「家業」として自己の所有物と化して代々引き継いでいる。

 「法相は朝、死刑のハンコを押し、昼のニュースのトップになるのは、そういう時だけという地味な役職だ」と述べて法相辞任に追い込まれた葉梨康弘氏は、同じパーティーで、「法相になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」と述べた。

 政治家を務める目的が「票と金」であると受け取られる発言。票を集めて政治家になり、政治家を「職業」として務める目的は「金」であるような与党政治家が多い。これらの議員は議員職を「家業」とし、「金」を増殖させるために「政治屋稼業」にいそしんでいる。この状況下で良い政治が行われるわけがない。

 だが、その責任の一端は主権者の側にもある。特定の家系が家業として政治屋稼業を営むことを是としてしまう主権者が存在する。利権政治屋を支援する主権者の多くは、何らかのかたちで利権のおこぼれを頂戴することが投票動機になっている。

 日本の国政選挙での投票率は5割程度。半分の国民が参政権を放棄している。選挙に足を運ぶ50%の主権者のうち、自公の与党に投票する者が半分いる。全有権者の25%だ。残りの半分は反自公勢力に投票している。しかし、反自公勢力から複数候補が立候補するため、小選挙区や1人区がカギを握る選挙では自公が国会議席の多数を占有してしまう。このことを拙著『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)に記述した。

 政治を利権政治屋、利権追求国民の手から奪還しなければならない。そのためには現行選挙制度の特性を踏まえた戦術を構築することが必要だ。問題は野党も利権化してしまっていること。野党の地位に安住することを目指す野党勢力が拡大していることが問題だ。真に日本政治刷新を目指す「たしかな野党」勢力を確立し、心ある主権者の大同団結を図らなければならない。

※続きは12月13日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「隠れ反日政治屋一族の黄昏」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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