2024年12月31日( 火 )

【2022年流通・小売業界回顧(2)】業態開発からみえる未来のカタチ(後)

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 コロナの感染が収まらなかった2022年。それでも社会・経済活動の正常化が進むなかで、小売業は生活者の意識や行動の変容に対応しつつ、コロナ後の持続的な成長を目指して、業態開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)活用、M&Aなどといった取り組みを活発化させた。この1年の動きを振り返りながら今後を展望する。

生活雑貨 可能性を秘めた新業態

 生活雑貨でも今後可能性のあるフォーマットが現れた。良品計画(東京都豊島区)は、暮らしの基本を支える商品の提供を目指し、500円以下の日用品や消耗品を中心に集めた新業態「無印良品 500」の展開をスタートした。

 9月、駅ビル「アトレヴィ三鷹」(東京都三鷹市)に1号店をオープンさせた。取扱商品の7割は500円以下の日用品・消耗品が約7割で、生活必需品の洗剤や掃除用品、キッチン用品、洗面用品、スキンケア用品、文房具、食品など約3,000アイテムを取り扱う。1号店は約181m2で、今後も99m2から333m2と通常の店舗と比べて売り場面積をコンパクトにし、駅ナカや駅チカ、街中など、日常的に来店しやすい生活圏に出店し、23年2月末までに都心部を中心に30店舗、その後年間20店舗のペースで出店する予定だ。来春以降、500円以下の日用品のラインナップを拡大し、春夏シーズンは約100アイテムの新商品を販売する予定で、消費者の根強い節約志向に対応していく。

 ホームセンター大手のDCM(東京都品川区)は11月、「恵比寿ガーデンプレイス」(東京都渋谷区)に都市型新業態となる「DCM DIY place」をオープンした。売り場面積は約1,200m2。取扱品目はDIY用品を中心に清掃・キッチン用品など約1万アイテム。日常の悩みを解決、くらしをより魅力的にするDIYのアイデア・商品を提案し、実際に店舗で試すことができ、同社初「DIYコンシェルジュ」を起用し、顧客の困りごとやDIYニーズに応える。

DXで店舗業務改善

DX イメージ    DX活用も小売業か抱える課題を解決し、店舗運営のイノベーションを促進する原動力として位置づけられている。とくにコンビニ業界は力を入れ、無人店舗の実験検証を進めているが、業務効率の改善にも着手した。

 ローソンは「AIを活用した値引き」の実証実験を21年6月~10月に東北で実施、今年6月~9月には対象を都内162店舗および東北23店舗に拡大した。AIが店舗の在庫数や販売実績に応じて値引き額を推奨するシステムで、値引き対象となるのはおにぎりや総菜、チルド麺など約270SKU。23年度中の全国展開を目指している。

 ファミリーマートも、AI事業を手がけるクーガー(東京都渋谷区)が開発した店長業務サポートシステム「人型AIアシスタント」を、23年度末までに約5,000店舗への導入を進める予定だ。店長業務のサポートや各店舗の状況、店長に合わせた最適なデータを提供し、店舗における省力化および店舗運営力の向上につなげていく。

 店舗におけるDXは今後もさまざまな分野で進み、業務効率の改善にとどまらず利便性も向上させ、さらにリアル店舗の存在価値を高める役割を担うだろう。

M&A、自力出店で拡大

 このように小売業は変化に対応し新たな価値を創造することで生き残りを図っている。一方、業種・業態を超えた競争は激しさを増しており、M&Aによる勢力拡大を目指す動きが引き続き見られ、大手企業による寡占化が進行している。

 ドラッグストア業界1位のウエルシアホールディングスは6月、関西を地盤とするコクミンと薬局運営のフレンチ(大阪市)の株式を取得し、170店舗を傘下に収めた。6位のサンドラッグも26年3月期の売上高1兆円達成に向けて、8年ぶりとなるM&Aを実施、10月にドラッグストア「mac」を56店舗に展開する大屋(愛媛県西条市)を子会社化し四国への進出をはたした。

 M&Aではなく、自力で出店エリアを広げて成長を目指す動きが目立つのがディカウントスーパー。関東を地盤とするロピア(神奈川県川崎市)は、5月に岐阜県に進出。本巣市に1号店を設けたのち、8月に岐阜市、10月に同県可児市に出店した。20年9月に大阪府寝屋川市に出店し進出をはたした関西でも、今年は神戸市にも店舗を設けるなど6店舗を出店し、13店舗にまで増えた。昨年、エイチ・ツー・オー リテイリングと関西スーパー(兵庫県伊丹市)の争奪戦を繰り広げたが買収に失敗したオーケー(神奈川県横浜市)も関西に進出する。24年前半をメドに東大阪市に出店する。両社とも、今後は中四国および九州での店舗展開も十分予想され、地元スーパーにとっては手ごわいライバルとなりそうだ。

 こうして22年を振り返ると、小売業は変革が求められており、イノベーションの重要性はますます高まり、23年もさらなる取り組みが進むだろう。インバウンド需要も復活が見込まれるなかで、新たな展開も予想される。ただ、消費は値上げラッシュの動向に左右され、小売業を取り巻く環境は依然として厳しい。ブレークスルーが従来以上に求められる。

(了)

【西川 立一】

(中)

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