2024年11月14日( 木 )

私が米国サンタクララ大学で経営学を学ぶ理由~強烈に垣間見える日本との違い~(前)

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APAMAN(株)
代表取締役社長 大村 浩次 氏

  日本最大級の賃貸管理戸数や賃貸斡旋店舗数を誇るAPAMANグループ。IT推進などにより順調に業績を伸ばしている。大村浩次APAMAN(株)代表は米サンタクララ大学ビジネススクール(カリフォルニア州)※に在籍し、シリコンバレーでMBAを学んでいる。日本での社長業の傍らのハードスケジュールのなかでである。なぜ米国の大学で学び、どのような体験をし、成果をどう生かそうとしているのか話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役 児玉 直)

※サンタクララ大学は、2010年U.S.News&World Reportの評価でパートタイムMBAプログラム全米10位、学士課程も同ランキング西部マスターカレッジで18年間2位にランキングするなど高い評価を得ている。

徹底した差別化策を展開

APAMAN(株) 代表取締役社長 大村 浩次 氏
APAMAN(株)
代表取締役社長
大村 浩次 氏

 ──サンタクララ大学で学ぶなかで何が特徴的だと感じていますか。

 大村浩次氏(以下大村) 先生方の人格や能力に加え、生徒を大切にする哲学、大学としてのIT力、さらには合理的な教育システムの質の高さに驚いています。多くの点で日本の大学を凌駕しています。

 経済に関し、多くの方が日本の「失われた30年」の話をします。授業で使用するハーバード・ビジネス・パブリッシングのテキストのなかで「日本はなぜ衰退したのか」について学びますが、日本企業の戦略のなさがこのような事態を招いたと紹介されています。日本人として悔しく恥ずかしい思いをしたと同時に、一刻も早く経済政策や社会体制を変えなくてはならないと強く感じました。我々は、政府や社会が変わることを要求するだけでなく、経営者が日本人として気概をもって仕事に取り組み、世界で戦わなくてはならないと思うのです。

 日本が第2の創業として新たな成長を目指すのであれば、目覚ましい発展を続ける福岡は日本を変える原動力になると感じています。福岡にはシリコンバレーやバンガロールのように、新たなビジネスや事業にチャレンジする文化があります。

 一例を紹介すると、「先生方の人格や能力」に関して、リーダーシップについて指導してくれた教授は、指導内容がすばらしいだけでなく、自らの書籍を全世界で400万部以上販売しており、実業家としても大成功していて尊敬に値します。

 「生徒を大切にする哲学」に関して、先生が生徒1人ひとりに気を遣っていることを常に感じます。授業後はいつも生徒に個別にアドバイスをしており、生徒の成長を支えたいという気持ちが伝わってきます。昼食時には大学の幹部がきて、大学の考え方や近況などをフランクに話してくれます。

 「大学としてのIT力」に関して、何を学ぶべきか、今どの位置にいるのか、将来何を学ぶか、学んだら何を実現できるのかなどについて、スケジュールやToDoが整理されており、容易に理解できます。多くがピクトサイン(視覚記号)化され、直感的にわかります。ITを活用している先生方が、学生ポータルに質の高い情報を常に提供しています。

 「合理的な教育システム」に関して、授業はすべて録画され、いつでも復習できます。録画の速度や関連資料のページ指定などもわかりやすいです。また、コンプライアンスや倫理を学ぶ際、判決が出ていない時期にケーススタディーで紹介されるスピード感や内容にも満足できます。大手企業やスタートアップの質の高い経営メンバーが登壇する件数も多いです。取締役会議の練習における、検討時間が限られたなかでの意思決定や問題が発生した場合の記者会見の練習では、記者やカメラマンなど10人以上が集まり、極めてハードな会見のなかで、どのように対応、発言すべきかなどを学びます。机の上の勉強ではないのです。すばらしい点はほかにも多くあり、実践的かつ合理的な教育システムには一生徒として感謝しています。

 ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授は『競争の戦略』(日本語版1985年発行)のなかで「差別化」の重要性を説いていますが、まさに大学間の競争に勝つための取り組みでしょう。

 ──差別化というと、日本では「おもてなし」に代表される、微に入り細に入りのサービスが思い浮かびます。

 大村 おもてなしは大切ですが、それには時間的、金銭的な負担が大きくなります。日本の家電製品はかつて差別化を強化するためにさまざまな機能、微に入り細に入る要素を付加することに注力していました。しかし、中国や韓国などの機能を絞った安価な製品とのコスト競争に敗れ、多くの企業がテレビなどの生産から撤退しています。日本の家電メーカーは「トレードオフ」ができず、機能と価格の両方を追うことで失敗したと思います。先に述べたハーバード・ビジネス・パブリッシングのテキストでも、日本の多くの企業がトレードオフを実現できなかったと記されています。

(つづく)

【文・構成:田中 直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:大村 浩次
所在地:東京都千代田区丸の内1-8-1
設 立:1999年10月
資本金:80億200万円
売上高:(22/9連結)449億2,600万円
URL:https://apamanshop-hd.co.jp/


<プロフィール>
大村 浩次(おおむら・こうじ)

APAMAN(株)代表取締役社長。1999年に“ITを活用して不動産業界の質的向上に貢献したい”という思いからAPAMANを設立。その後、ITノウハウを活用し、コワーキングスペースを提供するfabbit(株)の創設やその他のシェアリングエコノミーなど多種多様な事業を展開。アメリカなど海外事業も展開している。2021年3月、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了、22年8月から米国サンタクララ大学ビジネススクールのエグゼクティブMBAプログラムで学んでいる。

(後)

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