私が米国サンタクララ大学で経営学を学ぶ理由~強烈に垣間見える日本との違い~(後)
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APAMAN(株)
代表取締役社長 大村 浩次 氏日本最大級の賃貸管理戸数や賃貸斡旋店舗数を誇るAPAMANグループ。IT推進などにより順調に業績を伸ばしている。大村浩次APAMAN(株)代表は米サンタクララ大学ビジネススクール(カリフォルニア州)※に在籍し、シリコンバレーでMBAを学んでいる。日本での社長業の傍らのハードスケジュールのなかでである。なぜ米国の大学で学び、どのような体験をし、成果をどう生かそうとしているのか話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役 児玉 直)※サンタクララ大学は、2010年U.S.News&World Reportの評価でパートタイムMBAプログラム全米10位、学士課程も同ランキング西部マスターカレッジで18年間2位にランキングするなど高い評価を得ている。
ITを駆使した圧倒的ユーザビリティ
──ユーザビリティとトレードオフの追求が合理性追求のカギとなっているのですね。
大村 合理性を追求するにあたってITが駆使されています。大学のアンケートがITにより学生のポータルサイトと連携され適切なタイミングで学生に届けるなど、ユーザビリティが高いです。ユーザビリティの追求は、生活面でも垣間見られます。サンフランシスコ空港に到着してUberのアプリを立ち上げると、いつも向かう自宅の住所が自動的にレコメンドされます。私の過去の移動を分析しているのです。ユーザビリティの追求について、アメリカは圧倒的に進んでいます。
──教育システムの違いについてほかに感じることはありますか。
大村 日本では教員主導の指導が行われますが、米国では教員と学生が対等の立場であり、教員がより生徒をリスペクトし、気にかけていると感じます。入学当初、休み時間にほかの学生たちが団らんを楽しんでいるなかで、私は急ぐ仕事がありパソコンを打っていました。すると、教員が飛んできて「なぜ1人で過ごしているのか、友達がいないのか」と心配するのです。日本ではなかなか見られない出来事でしょう。大学と教員が、学生の成長には何が必要なのかを常に探っているのです。
アメリカでは会社で一定の経験を積んだ後に大学院で学び直すことが普通に見られます。サンタクララには学生にMeta(Facebookを運営)やGoogleの社員などが在籍しており、仲良くなれる環境です。現在約4,000人の大学院生を含めて約1万人の学生がいますが、日本人の院生は私だけのようで、グローバル化の観点からも残念に感じます。
「静かなる有事」が進行している日本
──21年3月に早稲田大学大学院を卒業していますが、なぜさらに米国の大学で学ぼうと考えたのでしょうか。
大村 08年9月に発生したリーマン・ショックにより、アメリカ経済は大混乱に陥りましたが、驚くほどのスピードで復活しました。また、人口が福岡県の約半数のシリコンバレーから世界を席巻する企業が多く生まれています。なぜこのようなことが起きるのかについてしっかりと学び、成果を自社や加盟企業に採り入れたいという想いが大前提です。社会貢献活動にも効果を発揮できると感じています。シリコンバレーにはスタンフォード大学もあり、多くの経営者を輩出しています。スタンフォードで教える方々とよく食事に行き、会うたびに学ばせてもらっています。
──日本の将来についてどう感じていますか。
大村 政府は人口問題を「静かなる有事」と指摘し、解決すべき最も重要な問題であると指摘しました。数年前に政府の少子化戦略会議の委員を務めていたこともあり、この問題は頭から離れません。このような思いから、地域の結婚や人口問題に少しでも貢献したく、地方の自治体や商工会議所と連携して出会いのサポートセンター「JUNOALL(ジュノール)」をNPO法人として、ボランティアで全国に13カ所設立させてもらいました。地域の皆さまからご支援をいただき、すでに約1,000人の方が結婚しています。ボランティアの輪を広げて1万人の結婚を実現したいです。
──福岡では「アビスパ」を支援し、成果が現れつつあります。
大村 アビスパ福岡の支援団体の一員として支援させてもらっています。名誉顧問・常任理事・理事の皆さまをはじめ会員の皆さまに心から感謝します。
時には捨てることも大切
──23年をどのような1年にしたいですか。
大村 私個人はもちろん、従業員も含め会社としてもっと学んで、より社業と社会に貢献できるようにしたいです。勘や経験だけ頼るのではない、分析や実践のケースに基づいた意思決定を大切にします。これらを追求することで、いい意味での合理化が進み、無駄が少なくなり、それから生まれる時間や利益を社員の労働条件改善や福利厚生向上に使いたいです。福岡にも貢献したいです。
昨今は、厳格な労働時間管理や人口減少などから若い方が企業を選ぶようになっています。これらを勘案すると、トレードオフの考え方も重要となります。何かを行うときは、何かを捨てる検討をしなくてはならず、言い換えれば、何かを捨てることは、何かを行うことと同じくらい重要という考え方です。
大学では、少数の方と密度の高い人間関係から生まれるビジネスの成果と、SNSなどで簡単ではあるがいつも容易に情報交換をできる人が生み出すビジネスの成果などの分析について指導を受けました。いくつかの研究は後者の勝利を示しています。情報発信やコミュニケーションの在り方が企業の成長にどのような影響を与えているかを分析し、企業の体質を変えることについても検討する、重要な年にしたいです。
(了)
【文・構成:田中 直輝】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:大村 浩次
所在地:東京都千代田区丸の内1-8-1
設 立:1999年10月
資本金:80億200万円
売上高:(22/9連結)449億2,600万円
URL:https://apamanshop-hd.co.jp/
<プロフィール>
大村 浩次(おおむら・こうじ)
APAMAN(株)代表取締役社長。1999年に“ITを活用して不動産業界の質的向上に貢献したい”という思いからAPAMANを設立。その後、ITノウハウを活用し、コワーキングスペースを提供するfabbit(株)の創設やその他のシェアリングエコノミーなど多種多様な事業を展開。アメリカなど海外事業も展開している。2021年3月、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了、22年8月から米国サンタクララ大学ビジネススクールのエグゼクティブMBAプログラムで学んでいる。法人名
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