親会社の経営不振受け、どうなるソフトバンクホークス
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プロ野球球団・福岡ソフトバンクホークス(以下、ホークス)にとって2023年シーズンは例年以上に注目される1年となりそうだ。親会社・ソフトバンクグループが22年3月期連結決算で当期利益マイナス約1兆7,080億円を計上。オーナーである孫正義氏の個人負債が合計約47億ドル(昨年当時のレート:1ドル140円換算で約6,600億円)にのぼると報じられるなど、グループと孫氏が経営上のピンチに陥っていると見られるからである。グループ業績の悪化は、ホークス球団の「身売り」という事態になりかねない状況すら想像させる。
孫氏は我が国を代表する経営者・投資家である一方、球団スローガンとして「めざせ世界一」を打ち出すなど、球団経営にとくに強い熱意をもつオーナーであることも広く知られている。たとえば、リーグ優勝や日本一達成の場で選手から胴上げされる様子はおなじみだ。その孫氏の苦境と彼が率いるソフトバンクグループの業績悪化について昨年、印象的なシーンが見られた。
22年11月に行われた23年3月期の第2四半期決算説明会において、孫氏は、今後は傘下の半導体設計大手である英国・アーム社の事業に集中することを明らかにし、説明会場を途中退場するというこれまでにない動きを見せた。これは報道やネットの世界を騒がせ、孫氏によるビジネスモデル崩壊の兆しを世間に印象づけた。
一方、ホークスの業績もコロナ禍の影響を受け、ここ2年低迷している。官報によると22年2月期業績は売上高約238億円、営業利益約1億円、経常損失約16億円、当期赤字約80億円。ただ、ホークスの業績はコロナ禍が収束すればある程度の回復が見込まれる。というのも、18年期に売上高が300億円を超え、3年連続で日本一となりコロナ禍の影響がなかった20年期には過去最高の売上高約325億円を計上するなどしていたからだ。
球団は独立採算体制を確立
このような業績によりホークスは球界のみならず、我が国、さらにはアジアにおけるスポーツビジネスにおける優良企業の1つとして広く認知されるようになった。また、12年3月、「福岡Yahoo! JAPANドーム」(当時、現在の「福岡PayPayドーム」)を買収。同時に観客動員の強化や新規スポンサー獲得、グッズ販売の拡大などを通じ収益性を向上させるなどし、独立採算が可能な経営体制確立を図ってきた。
こうした球団の状況を受け、「仮に球団を手放すことになっても、新たなオーナーはすぐに見つかるだろう。球団内には前身の福岡ダイエーホークスの身売り騒動当時のような動揺は見られない」と指摘する球団関係者もいる。
もっとも、21年・22年シーズンにはリーグ優勝を逃しており、大規模な選手補強をした23年シーズンにリーグ優勝を逃すようなことがあれば、ファンの熱意が冷め入場料収入の減少など球団経営が難しい状況に陥りかねない。孫氏は弱小球団だった当時、球団を本気で手放すことを検討したことがあるという。23年シーズンはそうした事情もあり、ソフトバンクグループ全体と孫氏の動向も合わせ、ホークスに注目すべきではないだろうか。
【田中 直輝】
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