2024年12月23日( 月 )

シックハウス対策が進展 佐賀大でアトピー改善物質発見

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 住まいや建物を原因とする疾患の1つに「シックハウス症候群」がある。症状は人それぞれで、目眩(めまい)や、鼻や喉の異常、頭痛、アトピー性皮膚炎、倦怠感などがある。ひどいケースでは吐き気や不整脈、手足のしびれ、呼吸器障害などとなることもある。

 原因は、建材や家具などから発する有機溶剤(ホルムアルデヒドなど)、防腐剤などから発する揮発性有機化合物(VOC=Volatile Organic Compounds)。この他、細菌やカビ、ダニが原因となることもあるとされている。

 全く症状が現れない人がいる一方で、過敏な人はわずかな化学物質でも上記のような症状が出る、あるいは症状がなかった人が突然発症するケースもある。専門医が少なく、原因が特定されづらいということも同症候群の大変やっかいな点だ。

 建物の高気密化・高断熱化が同症候群発症を促しているとも言われている。換気に問題がある建物の場合、室内の有害化学物質が排出されず残置されるからだ。加えて、室内の湿度が高くなることで細菌、カビ、ダニが繁殖し、それも発症の要因の1つとされている。

国はシックハウス対策を進めてきたが…

 社会問題化を受け、国は2003年に建築基準法を改正。住宅を含む建物の建築についてホルムアルデヒド対策、クロルピリホスの使用禁止といった規制を設けた。前者は、内装仕上げ材などに使われ、居室内の空気中に発散される化学物質である。対策として含有量の少ない「F☆☆☆☆(フォースター、☆が少ないほど含有量が多い)」の使用の推進、換気設備設置の義務付けなども行われた。また、後者はシロアリ駆除剤として使われていたものだ。

 厚生労働省は04年、「化学物質の室内濃度指針値」を公表し、ホルムアルデヒド、クロルピリホスを含む13物質について、それぞれ指針値を示し、住宅供給者は指針値に沿った部材を使用するようになっている。

 しかし、同症候群を発症する人は依然多い。指針値以下の化学物質でも症状が出る人がいるほか、使用の禁止や制限されたものの代わりとなる(化学組成が異なる)化学物質が新たに生み出され、それが建物に使われるケースもあるためだ。

 ところで、11日、シックハウス症候群の1つで、強いかゆみが特徴のアトピー性皮膚炎について興味深いニュースがあった。佐賀大学が発表したもので、医学部の出原賢治教授の研究グループがかゆみを改善する化合物を新たに発見したとしている。

 患者の皮膚組織で作られる「ペリオスチン」が知覚神経に作用して痒みを引き起こすというメカニズムに加え、その阻害剤(化合物)が痒みを著明に改善するという内容だ。今後、治療薬の開発にあたるとしている。

 同皮膚炎の痒みは日常生活において大きな支障となり、その患者は多く幼児から高齢者まで幅広い層に広がっている。上記のような事情から住まいなどハード面での対策では十分な対応が難しい以上、効果ある治療薬の開発が期待できるという今回のニュースは、患者にとって朗報と言えるだろう。


住まいは数多くの建材、家具やソファーなどのインテリア製品、小物などで構成されている。
シックハウス症候群の症状がある場合、それら製品に使用されている化学物質が原因となっている可能性があり、特定しづらいこともやっかいだ(イメージ)

【田中 直輝】

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