仰天!ホリエモンが「犬猿の仲」SBI北尾氏と「和解」したワケ(後)
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暮れも押し詰まった2022年12月26日、日本経済新聞電子版に載った1枚の写真を見て、思わずのけぞった。北尾吉孝SBIホールディングス会長兼社長を挟んで、ホリエモンこと堀江貴文氏と稲川貴大インターステラテクノロジズ社長が笑みを浮かべて並ぶ写真が載っていた。「マジか」と仰天した。北尾氏と堀江氏は深い因縁で知られている。ネットで「歴史的和解」と盛り上がったのも無理はない。
ニッポン放送=フジテレビの「白馬の騎士」として登場した北尾氏
有森隆著『強欲起業家』(静山社)よりハイライトの部分を見てみよう。
ライブドアに、ニッポン放送株を買い集める軍資金を提供したのが、リーマン・ブラザーズだった。MSCB(転換社債型新株予約権付社債)を発行して800億円を融通した。MSCBは、引き受け手が確実に儲かる仕組みになっていることから、究極のマネーゲーム商品といわれていた。
05年2月8日、ライブドアは東証の時間外取引で、ニッポン放送株式の29.8%を電撃的に取得した。前日まで買い集めた分と合わせて、ライブドアグループはニッポン放送株式の35.0%を掌中に収めたことになる。
持ち株比率が3分の1を超えたことから、ライブドアはニッポン放送の株主総会で拒否権を発動できるようになった。ニッポン放送の首ねっこを押さえたわけで、フジテレビに対して強い発言権をもちうる。堀江氏の狙いは、ズバリ、フジテレビの経営に関与することだった。
この時から、ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株式の争奪戦が始まった。同年3月16日、ライブドアはニッポン放送株の過半数を押さえた。これで勝負があったかにみえた。
このとき、ソフトバンク・インベスメント(株)(現・SBIホールディングス)の北尾吉孝氏が、ニッポン放送=フジテレビの”白馬の騎士”として登場する。
北尾氏はニッポン放送が持っていたフジテレビ株式を借り受け、一夜にしてフジの筆頭株主に躍り出た。ニッポン放送を経営的に支配して、本丸のフジに駆け上がるハシゴが外されたのである。外されたというより、ハシゴを登り切ったところに北尾が立ちはだかり「ホリエモン、待った!!」と大声で叫んだのだ。(『強欲起業家』より)
『論語』を使い「倫理的価値観」は重要と説く北尾氏
ホリエモンは、北尾氏にニッポン放送=フジテレビの経営支配を阻止された恨みを決して忘れなかった。10年以上前の「因縁戦争」が火を噴いた。
17年7月3日、SBIホールディングスの北尾氏が『週刊現代』のインタビューを受け、自身の経営哲学を披露した記事がネット上にアップされた。
北尾氏はこれまでも幾度も『論語』や哲学を重要視し、自身の生き方や経営に活かしていると語っている。このインタビューでも、論語の話を持ち出し、経営者が事業をするうえでは「倫理的価値観」が重要と語る。近年、北尾氏は哲学者じみているが、この時も人格者然とした内容である。
ホリエモンが北尾氏を糾弾
ホリエモンこと堀江貴文氏が、経済アプリ「News Picks」(7月5日付)で糾弾した。
堀江氏は
ほんとマジこいつクソ。自分が一番倫理観ねーくせに、論語とか哲学だの表向きのカッコつけばっかり。
堀江氏は北尾氏にまつわる”因縁の過去”を披歴した。
実際は金の亡者そのもの。俺がライブドアで100分割した時に、会社に強引にアポ取ってきて忙しいから断ってもしつこく秘書に鬼電して無理やり乗り込んできて言った言葉が忘れられない。「SBIとライブドアで5%ずつ増資して持ち合いしよう。そして株価が上がったらお互い売ってファンドをつくろう」だよ。
堀江氏はスルーしていたが、この話の1年後の2005年、ライブドアによるニッポン放送買収騒動の際、今度は北尾氏がニッポン放送側の「白馬の騎士」として登場。ライブドアの買収を阻止した北尾氏の知名度は一気に上がったのだった。
堀江氏はこう綴った。
その時言った言葉が「株式市場の清冽な水を汚した」だよ。こいつマジサイコパスなんじゃね?そしてこいつを尊敬しているとか言っているやつを頭おかしいと断言するよ。
普段はやらないコメント欄での「追記」も行い、
自分がやっている事と言っている事が矛盾してないんなら剛腕経営者として尊敬するよ。でもそうでないからカスだとおもいます。
と最後まで辛辣だ。
「感情」より「勘定」の大人の選択
とかく「偽善者」と見られている北尾氏と「偽悪者」を気取る堀江氏は、所詮は「水と油」。両者の関係は「犬猿の仲」「不倶戴天」と評された。
ところが、ロケット開発で両者は手を組んだ。一体、何があったのか。周囲は呆気にとられた。「歴史的和解」と盛り上がったほどだ。
23年1月4日、(株)新生銀行は(株)SBI新生銀行に商号変更した。新生銀行を買収したSBIホールディングスの北尾氏は、いまや大銀行のオーナー経営者だ。間もなく、72歳を迎える。金持ち喧嘩せず。成熟した経営者としてベンチャー企業を素直に支援するということだろうか。
一方、堀江氏も50歳。もう若くはない。もはや何ごとにも牙を剥いていたかつてのホリエモンではない。「感情」より「勘定」という大人の選択をしたといえるだろう。
(了)
【森村 和男】
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