博多駅前殺人事件を契機に知る「ストーカー犯罪の今」
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1月16日午後6時過ぎ、福岡市博多区博多駅前2丁目の路上で那珂川市に住む会社員・川野美樹さん(38)が男に刺され、亡くなった事件。現場はJR博多駅博多口から大博通りを北に約100m程度進んだ、ビジネスマンや観光客などの人通りが多いエリア。男は犯行後、現場から逃走していたが、18日午後、警察に発見され、任意同行に応じて事情聴取を受けているという。
さて、ストーカー犯罪をめぐる状況はどのようになっているのだろうか。警察庁によると、全国におけるストーカー規制法に基づく行政措置のうち「警告」は、2017年の3,265件から21年には2,055件となるなど減少傾向にある。一方、「禁止命令等」が21年に1,671件(17年662件)、そのうちの「緊急禁止命令等」が808件(同267件)となっており、それぞれこの4年間で最多を記録している。禁止命令の発出は毎年増えており、このことは警察がストーカー犯罪対策により積極的に取り組んでいる様子を表している。
ちなみに、検挙状況をみると21年に「住居侵入」が337件、「禁止命令等違反」が125件と4年間で最多となっていた。21年はコロナ禍による行動制限が一定レベルの強さで行われていた年であり、直接会えない「人恋しさ」がこの2つが最多になったことの背景にあるというのは優しい見方だろうか。なお、「殺人」は4年間にそれぞれ1件ずつ、「殺人未遂」は9~3件発生していた。
重大事件化を懸念していた警察関係者
ところで、今回の事件のお膝元である福岡県のストーカー犯罪についてだが、県警本部ではオープンデータを発表しておらず、問い合わせに対して「事件直後でありタイムリーな情報開示が難しい」との返答があった。そこで、参考になる情報があったので紹介しておきたい。22年12月5日付けの読売新聞による、「ストーカー相談件数が3年連続で全国最多、『県警一歩踏み込み迅速に対処』」と題する記事である。
それによると、福岡県警が21年に受理したストーカーに関する相談件数は全国最多の1,471件であり、これは全国平均(419件)を大きく上回っていたとしている。記事中には「ストーカー事案は重大事件に急展開する特性がある。被害者の安全確保を最優先に、一歩踏み込んだ迅速な対処をしたい」との県警関係者の話があるが、今回の事件はその懸念が実際のものとなり、また県警の被害防止への決意を踏みにじるものとなってしまった。
女性はストーカー被害を複数回、福岡県警に相談していたことが判明しており、それを考えるとやるせない気持ちになる。この場を借りて、被害者となった川野さんとご遺族に対し深い哀悼を示すとともに、犯人逮捕と動機の解明、そしてこのような痛ましい事件の再発防止を願わずにはいられない。
【田中 直輝】
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