週刊朝日休刊、時代の趨勢とつれづれ思うこと
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『週刊朝日』が今年5月で休刊するとのニュースが出た。
新聞の苦境、雑誌の苦境は自明のことであって、休刊は驚くことでもない。むしろ休刊の話を見て、週刊朝日という雑誌がまだあったことを思い出したくらいだ。
週刊朝日の販売部数の動向を(一社)日本雑誌協会の印刷証明付部数で見てみると、2009年に年間100万部割れ、その後、7~8%ずつ毎年販売部数を減らして、18年度に50万部割れしている。
週刊誌売り上げトップを誇る週刊文春は、09年頃は300万部、直近は年間200万部程度で、なにかとスクープを飛ばして話題になるといっても時代の趨勢には逆らえない。今回の週刊朝日の「廃刊ではなく休刊」という建前を文字通り受け取れば、いずれ何らかの形で復刊するものと期待したい。むろんジャーナリズム復活への期待として。
だが週刊朝日休刊のニュースを聞いて、まっさきに頭をめぐらせたのは、上記のような販売部数云々の話ではない。佐野眞一氏のことだ。12年に週刊朝日に連載した橋下徹氏に関する記事が、部落差別を助長する表現があったとして大きく問題となった。しかしその前後で部数に大きい変動があったわけではない。上述の通り、年々コンスタントに減らしていた。
それはさておき、佐野氏といえば、『東電OL殺人事件』(2000年、新潮社)が著名だ。東電社員だったエリートOLが仕事後に路上で立ちんぼをしており、ついには殺害された顛末は事件当時(1997年)も話題になったが、同書によって事件と被害女性の生活のあらましが明らかにされたことによって、男性中心の社会で孤軍奮闘する女性たちの共感を呼び「東電OLは私だ」という声が挙がった。今に至るまで、当事件は日本社会の一端を浮き彫りにした事件として影響を与え続けている。
その佐野氏も、昨年9月に死去した。
時代の趨勢と一言で言ってしまうことは簡単だ。しかし、人間の真実は死なない。それに向き合う姿勢は、ジャーナリズムの端くれとして、過去の事件を肝に銘じながら、これからも追及していく必要がある。
【寺村朋輝】
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