【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(24)】放漫財政篇2:本業でプラスを生み出せない状況が常態化
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2019年12月の就任以来、栄えるのは医学部と病院部門だけで十分といわんばかりに、我田引水丸出しの施策に強権をふるってきた朔啓二郎・福岡大学長。今度は唐人町の旧福岡市立こども病院跡地での新病院開院を目論んでいるようだ。目論見通りに落札をはたすとして、これが福岡大の未来にプラスになるのだろうか。そもそも、いまの福岡大にそんな余力はあるのか。【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史】シーズン4となる本連載では、朔学長の舵取りの危うさ・無謀さを、財務状況から明らかにする。
筆者が大学院生だった四半世紀前は、その堅実経営・安定財政ぶりが東京の大学の小さな研究室でも噂になっていた福岡大も、近年は「カツカツ」でやり繰りしてきた。
とくに巨額のコロナ関連補助金を投入される直前の5年間は、事業活動全体での収支(「基本金組入前当年度収支差額」)が、2015年度は20億5,400万円、16年度11億8,100万円、17年度9億1,400万円、18年度△1億8,800万円、19年度△2億1,100万円と減益の一途をたどっている(【表3】)。経常収支をみても、4億2,700万円(15年度)、△3億3,300万円(16年度)、2億8,400万円(17年度)、△8億5,400万円(18年度)、△1億6,500万円(19年度)と赤字の年のほうが多い(【表4】)。
教育活動収支では△2億2,000万円(15年度)、△9億4,500万円(16年度)、△4億4,100万円(17年度)、△15億9,900万円(18年度)、△9億6,700万円(19年度)と、5カ年連続で赤字(【表5】)。日本私立学校振興・共済事業団の経営判断指標(※1)で「イエローゾーン〔経営困難状態〕の予備的段階」に陥った年もある。要は、本業である教育研究活動で支出超過の状況が常態化し、特別収支(資産売却・処分などによる収支)で何とか帳尻を合わせてきたような財務状況なのだ。
大学法人(※2)は教育・研究という公共性の高い活動を担う事業体であって、一般企業のように利益を追求するものではない。とはいえ、その公益性の高い事業を維持し発展させるために、各大学は毎年ある程度の利益を出し、財政的な余裕を形成していかねばならないのもたしかである。かくして全国の大学法人は各々知恵を絞り、事業活動収支差額比率(※3)は平均で4%前後、経常収支差額比率(※4)は3%後半、教育活動収支差額比率(※5)は2%台で推移してきた。そのなかで、福岡大の利益率は各々2.7%・0.6%・△0.3%(15年度)、1.6%・△0.5%・△1.3%(16年度)、1.2%・0.4%・△0.6%(17年度)、△0.2%・△1.1%・△2.1%(18年度)、0.3%・△0.2%・△1.2%(19年度)と、常に全国平均を2〜4ポイントも下回ってきた(【表3】〜【表5】の「参考」と比較のこと)。
そもそも学生生徒数の多い大学法人は利益率が高くなる傾向にある。たとえば最大規模のカテゴリーである「在籍者数10千人以上」の大学法人の平均は、事業活動収支および経常収支が5〜6%台、教育活動収支で4%台の黒字。在籍者約2万3,000人を擁する福岡大がいかにその規模のメリットを生かせずにきたかよくわかる。
たしかに「医歯系複数学部」の大学法人(もちろん福岡大もこのカテゴリーに含まれる)は医療収入も大きいが医療支出も大きく、従って各利益率は全体の平均よりも低くなるが、それでも事業活動収支は3〜4%、経常収支3%、教育活動収支2%前後の黒字である。してみると、やはり福岡大の経営には、構造的な問題があるのではないか。
(※1)日本私立学校振興・事業団の「経営判断指標」:学校法人が自身で経営状態を大まかに把握するためのツールとして、同事業団が提供しているフローチャートのこと。本業である教育研究活動のキャッシュフローをベースとし、外部負債と運用資産の状況も加味して、学校法人の経営状況を14段階(「A1」〜「A3」=「正常状態」「B0」=「イエローゾーンの予備的段階」「B1」〜「B4」および「C1」〜「C3」=「イエローゾーン」「D1」〜「D3」=「レッドゾーン」)に区分する。
(※2)「大学法人」とは、正式な呼び方ではないが、日本私立学校振興・共済事業団などが大学を有する学校法人を指して使用する呼称であり、本稿もそれにならう。
(※3)事業活動収支差額比率:基本金組入前当年度収支差額(=教育活動収支差額+教育活動外収支差額+特別収支差額)の、事業活動収入(教育活動収入+教育活動外収入+特別収入)に対する割合。13年4月に公布された学校法人会計基準改正に基づき、15年度の会計年度から適用されている新会計基準の導入以前は、「帰属収支差額比率」といった。事業活動全体でどのぐらい利益が残るかを表す指標で、一般企業の売上高当期利益率(大学は非課税であるから、より正確には企業の売上高税引後当期利益率)に相当。
(※4)経常収支差額比率: 経常収支差額(教育活動収支差額+教育活動外収支差額)の経常収入(教育活動収入+教育活動外収入)に対する割合。15年度の新会計基準(そこで初めて「教育活動収支」「教育活動外収支」「特別収支」の区別が設けられた)導入以降用いられている指標で、この比率がプラスで高いほど、経常的な収支が安定していると判断される。一方、マイナスになる場合は資産の流出が生じていることを意味し、将来的な財政不安の要素となる。学校法人を継続的に維持するためには毎期基本金組入相当のプラスを確保することが必要であることから、10%が目標値とされている。
(※5)教育活動収支差額比率:学生生徒等納付金、手数料、寄付金、経常費等補助金などから構成される教育活動収入と、人件費、教育研究経費、管理経費等からなる教育活動支出との差額の、教育活動収入に対する割合。経常収支差額比率と同様、15年度の新会計基準導入以降用いられている指標で、本業である教育活動収入の範囲内でどの程度余裕をもって運営できているかを示す。また、この比率が高いほど、施設設備投資に充てる資金を確保できることになる。
(つづく)
【特別取材班】
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