2024年11月05日( 火 )

「人づくり、まちづくり、国づくり」 2023年に向けた方向性(後)

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(一社)福岡県中小企業経営者協会連合会
会長 小林 専司 氏

 (一社)福岡県中小企業経営者協会連合会(以下、中経協)は、県内の福岡、北九州、筑後、筑豊の4つの中小企業経営者協会をまとめている。4つの中経協の会員企業の交流促進・企業価値向上に寄与し、企業のみならずその地域、ひいては国が発展していくために活動を続けている。今回は中経協の2023年における方針や現在の若者について語ってもらった。

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

若者といかに付き合っていくか(つづき)

 ──個人も企業も、最終的に目指すのはあくまで「国づくり」なのですね。

 小林 そうですね。時代の流れは早く、世界もどんどん移り変わっていきます。コロナ禍をはじめ、想定していないことが次々と起こり、国家や世界の情勢がどうなるか見通しの立たない状況になりました。昨年でいえば、ロシアによるウクライナ侵攻ですが、これは日本も国防を強化すべきだと感じさせられる出来事でした。国が強ければ他国から攻め込まれる余地はありません。しかし、内部に綻びがあると、そこに付け込まれ、乗り込まれます。日本に攻め込んだら痛い目に遭うだろうと、他国に示しておく必要もあるでしょう。

(一社)福岡県中小企業経営者協会連合会 会長 小林 専司 氏
(一社)福岡県中小企業経営者協会連合会
会長 小林 専司 氏

    たとえば、私の義理の兄は防衛庁の総務部長、第三師団の師団長を務めていたため、頻繁にロシア・ウクライナ問題の話をし、我が国の国防について憂いていました。若い人たちも、日本を守らないといけないという強い意志をもたねばならない世の中になったと感じます。不安定な時代となったことで、国づくりの重要性を痛感しました。当然ではありますが、マクロというのはミクロの集合体であり、日本というよい国を存続していくために、しっかりと「人づくり」のための教育を行っていきます。

 ロシアもいい例です。以前は強そうに見えていましたが、実際には兵器は弱かったですよね。まず産業が発達しておらず、エネルギーだけの国だったという印象です。軍事的側面においても、「国づくり」の重要性を感じる時代となりました。そうした「国づくり」を重視するからこそ、若者向けのグローバルなイベントを実施していきます。

 ──グローバルな人材については、各国と日本の若者で違いを感じることはありますか。

 小林 ベトナムやパキスタンなど、各国から人材が来ますが、最近はインドの技能実習生が優秀だと思っています。ちなみに、インドには日本人学校をつくっています。人口も多いですし、今後とも視野に入れている国ですね。また、最近ではミャンマーからも技能実習生を入れようとしています。

 かたや、日本の若者については、英語をもっと勉強すべきと感じています。他国との比較で、依然として英語が弱い若者が多いという印象を受けます。グローバル人材を増やすために、英語教育に尽力する必要があるのは間違いありません。とくに福岡は国際的な街であるため、グローバル人材を有するという強みをもつことでこそ、未来への道が開けると考えています。

 ──そのほか、日本の若者に足りていないと感じる部分はありますか。

 小林 理系の人材が重要になってくるのは必然でしょう。理系の思考力がある人材はビジネスの場面で強く、経営にも向いています。なにより、数字に強いです。そうした数字の面で支える人がいないと、企業経営は成り立ちません。私は小学校のころから理数系の教育を本格的に施せば、優秀な子どもが育つと考えています。日本はものづくりの国であり、そうした教育は企業のためにも、「国づくり」のためにも役立つでしょう。

 また、最近の教育の手法として私が気に入っているのは、海外の一部の私学で行われている小学校から高校までを8年で終わらせるプランです。大学の授業料は高額で、海外に子どもを出すとするなら、さらに授業料は跳ね上がります。返済不要の奨学金などの制度もありますが、それが適用できるのは一部であり、教育費というのは本当に高額です。8年で終えられるのであれば、そうした経済的な負担はいくらか軽減できるでしょう。

 ──海外の教育制度や大学の在り方については、見習うことが多いですね。

 小林 海外の大学は日本と大きく異なります。たとえば、アメリカの大学は経営のスタンスがまったく異なっており、投資して規模を拡大しています。巨額の投資があって回している学校としてはカリフォルニアのスタンフォード大学などが代表例ですね。事業家になった卒業生が大学に莫大な支援をして、それで回っているところもあります。結構な利回りがあるのではないでしょうか。

 なお、今回の「福岡未来創造キャンプ OnYourMark!」で、スタンフォード大学の西村先生にご協力をいただいているのも、そういった日本と違う海外の教育を取り入れるためでもあります。

 ──日本は、大学が学生たちをお客さんと思っていて、逆に学生も自分たちをお客さんだと考えているふしがあるでしょう。事実、大学は就職のためのステップに過ぎない、という考え方が蔓延しています。

 小林 日本は、そもそも学びに対する在り方自体が間違っていると考えています。我々が掲げている「福岡エデュケーションバレー構想」は、学校現場に「人づくり」を任せてしまうのではなく、我々経済界でも教育を行い、連携しながら人を育てていくという考え方です。リアルな社会と教育の現場に橋を架け、真正面から本質的な問題に向き合ってほしいという思いで、インターンシップの推進などさまざまな取り組みを行っているのです。「福岡エデュケーションバレー構想」を実現させて、さまざまな学び場が集結するまちづくりを目指すために、そして福岡を教育特区にするために、23年も取り組みをより充実させていきたいと考えています。これからも「人づくり、まちづくり、国づくり」のために邁進していきます。

(了)

【文・構成:吉村 直紘】


<ASSOCIATION INFORMATION>
会 長:小林 専司
所在地:福岡市中央区天神1-4-2
設 立:2015年10月(協会設立:1974年)
TEL:092-753-8877
URL:https://www.chukeikyo.com


<プロフィール>
小林 専司
(こばやし・せんじ)
 2005年10月に福岡ロジテム(株)を設立、代表取締役社長就任。会社経営とともに、ボランティア活動にも精力的に参加。福岡県中小企業経営者協会連合会会長を務め、福岡経済を代表する経営者の1人として活躍している。

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