2024年11月30日( 土 )

政策活動費資金使途を開示せよ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「軍事費層や増税よりも政治資金規制の正常化が必要だ」と訴えた1月26日付の記事を紹介する。

 本年1月の岸田文雄首相外遊に政務秘書官の長男翔太郎氏が随行し、各地で公用車を用いた観光に興じていたと報道された。
 これが岸田政治の実態。自民党党首選のときだけ「分配問題が重要」と述べたが単なる「リップサービス」に過ぎなかった。

 「リップサービス」といえば旧統一協会との深い関係について疑惑がもたれている細田博之衆院議長が議院運営委員会の与野党代表者に対し、「リップサービスだった」との弁明を示した模様。やましいことがないなら記者会見に応じて説明責任をはたすべきだが会見を開かない。

 細田氏は統一協会関連の会合に出席、挨拶したことが8回あると判明している。2019年10月の友好団体会議で「韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の提唱によって実現した、この国際指導者会議の場は、大変意義が深い」「今日の会の中身の内容をさっそく安倍総理に報告したい」とスピーチした。

 1月24日の議運関係者への説明で細田氏はこのことについて、「この団体が安倍元首相に近い団体というのは知っていたので、リップサービスとして言った。ただ安倍元首相には報告していない」と弁明した。「リップサービス」という言葉を「実態をともなわないうわべだけの言葉」の意味で使用していることが分かる。
 公の場での発言について「リップサービス」と言い切ってしまうところに、細田氏がいかに信用できない人物であるかが象徴されている。「自分の発言を信用するのがおかしい」と主張しているようなもの。

 岸田首相が述べた「分配問題が重要」も単なるリップサービスに過ぎなかった。昨年5月のロンドン講演で岸田首相は「資産所得倍増プラン」を提示した。分配問題の背景に圧倒的多数の国民が下流に押し流されている現実がある。「分配が重要」は「下流に押し流されている人々の所得環境是正」を意味する。「資産所得倍増」政策で恩恵を受けるのは多額の資産を保有する者である。

 自民党党首選で提示した金融所得課税見直しも雲散霧消した。現行制度では収入金額が1億円を超えると税負担率が低下に転じる。高額所得者の所得大宗を株式譲渡益、利子、配当が占める。株式譲渡益、利子、配当に低率の分離課税が認められているため、高額所得者の税負担率が所得増加に連動して分離課税税率に向け低下する。
 これがいわゆる「金持ち優遇税制」である。

 岸田内閣は軍事費増大にともなう増税提案を示すなかで金融所得課税見直しに言及したが、その対象を所得が30億円以上の者だとした。このカテゴリーに含まれる国民は日本全体で200~300人程度しかいない。本気で取り組む考えがないということだ。
 軍事費倍増など無駄遣い以外の何者でもない。現存する装備を廃棄して米国軍産複合体が提供するぼったくり兵器を買わされるだけ。軍事費を削り、すべての国民に保障する最低所得水準を手厚くするのが「分配の是正」だろう。

 そもそも、日本の議員の報酬が高すぎる。政治家を儲けの大きい職業として家業化する例が蔓延している。政治家は公に尽くす仕事で高額報酬は適正でない。「公に尽くすため」にではなく「金儲けのため」に政治家を目指す者ばかりが溢れかえる。「政治とカネ」の問題が議論されて久しいが、真っ先に手を付けるべき問題がある。

 政治資金規正法21条の2の改正だ。

(公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)
第21条の2 何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭などによるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。
2 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。

 1994年の政治改革関連法制定に際して政治資金規正法に、「政治家は誰からの寄付も受けてはならない」ことが定められたが、第2項に「政党がする寄付には適用しない」が追記された。これが巨大な抜け穴のしかけだった。数千万円、数億円、数十億円の資金が政治家に渡り、その資金がどのように使われているのかが不明である状態が放置されている。

 政治が信頼を取り戻すための第一歩は政治資金使途の透明化。政治資金規正法第21条の2第2項を削除すべきだ。

※続きは1月26日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「政策活動費資金使途を開示せよ」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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