2024年11月24日( 日 )

【福岡大学の変貌(6)】朔啓二郎は福岡大の「ノイズ」

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 つい先週の日曜日、元福岡大学教授の某氏を訪ねた。別件での訪問であったが、Net IB Newsで「徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史」を読み続けてきた私は、つい「朔啓二郎を知ってますか?」と口に出して聞いてしまった。すると、それまでは和やかだった氏の顔が急に曇った。

 氏は同じ大学とはいえ医学部ではなかったので、朔とは縁がなかった。しかし、長年大学の執行部にいたため、他学部の人とも通じており、朔のことも知るに至った。

イメージ「私が執行部にいたとき、彼は医学部長をしていて、最初会ったときは恰幅のいい人だと思ったんですが、話してみると欲深そうで、押しも強かったですね。こういう人が権力欲に取り憑かれたら恐いなと思いましたよ」

 それを聞いた私は氏にNet IB Newsの「朔学長の裏面史」を読んだことがあるかと聞いてみた。すると首を横に振って、「読んでない」という。

「福大を離れてこうして静かに暮らしてますとね、そんなニュースはまったく入ってきませんし、興味もありませんよ。福大がすっかり変わってしまい、いいところがなくなったんで、それで早期退職を願い出たんですからね。在職中のことなど、思い出しもしません」

 そこで少し強引だとは思ったが、思い切ってこう尋ねてみた。「先生の退職と、朔が学長になったことと関係ありますか?」と。

 すると氏は大きく頷いて、こう言った。「直接は関係ないように思えるんですが、やはり関係していると思います。あの人が医学部長だったとき、学長選挙に出るという話が持ち上がりました。私は最悪な事態が起こるのではないかと恐れたんです。でも、そのときは落選してくれた。ああこれで福大は生き延びられる、と思ったものです。でも、その後の福大は妙にギクシャクしてきた。大学らしさをみるみる失っていった。もう私のような人間がいる場所ではない、そう感じさせられたんです。それで早期退職しました」

「でも、朔が落選したのなら、先生は彼が学長になる前に退職されたわけだから、直接の影響はなかったのでは?」

 すると氏は今度は私以上に熱を込めてこう言った。

「いや、それがあるんです。彼が医学部長として大学運営に口を出し始めたそのころから福大はおかしくなった。それまでにも福大にはいろいろ問題はありましたけれど、最低限の良識があった。それが崩れ始めたんです。彼が医学部長になったことが大きな転機だった、と今にして思いますよ」

 氏は福岡大がどのようにダメになっていったのか、それをいくつかの事例を挙げて説明してくれた。多くは私も聞きおよんでいたことだった。
「福大の変貌の裏には、やっぱり朔さんの暗躍があった、そう思います」

 聞いていて気づいたのは、口では福岡大など忘れたと言いつつも、氏がいまだにこの大学のことを気に掛けているということだった。と同時に思ったのは、朔のような人物が医学部長にのし上がり、やがては学長にまでなっていくその過程が福岡大の質の低下と並行しているのなら、むしろ朔の暗躍は、福岡大というシステムの老化が招いたものではないかということである。というのも、たった1人の人間に大きな機構を変える力などあるはずがなく、機構全体が崩れつつあるからこそ、あのような人物の活躍が許されるからだ。

 比較対象として良くないかもしれないが、あえて言わせてもらえば、ヒトラーのような異常者がドイツという国家を支配するようになったのは、決してヒトラーの実力によるものではなく、彼のような人間が活躍できる土壌が当時のドイツにあったからなのである。ナチス党は、第一次大戦の敗北でニヒルになっていたドイツ人全体から生まれたもので、ヒトラーはドイツ人の精神の空洞化を利用してのし上がったのだ。

 システムというものが大きくきしむと、必ずノイズが発生する。いま問題になっている朔という人物は、福岡大というシステムのきしみが生み出したノイズと言ってよいのである。従って、真の問題は福岡大というシステムそのものにあり、それを精密に分析しないで朔ばかり告発しても、解決にはならないということだ。朔を生み出した土壌にこそ、福岡大の病があると見るべきなのである。

 福岡大は私大だから営利目的をもつのは当然である。しかし、大学というシステムは営利目的だけでは機能しない。福岡大が朔のような人物の暗躍を許すということは、その本来の目的を見失い、単なる企業となり下がったことを意味する。福岡大の教職員たるもの、そのことに目覚め、朔をいち早く学長の座から引きずり下ろし、自浄作業を開始すべきなのだ。

 車がノイズを発しているのに運転を続ける人はいない。しかし、大きな組織となると、その構成員の意識は鈍化する。このままだと福岡大は朔と心中することになろう。改革は内部からしかできないということを肝に銘じるべきだ。

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