2024年11月22日( 金 )

33期連続の増収増益で小売業界4位 「ドン・キホーテ」が勝ち続ける理由(中)

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 「ドン・キホーテ」のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の2022年6月期の売上高は、前期比7.2%増の1兆8,312億円、営業利益は同9.2%増の886億円。1989年の1号店出店から、33期連続の増収増益で、小売業界4位にまで上り詰め、今期も第1四半期は、それぞれ6.3%増、48.4%増と好調だ。強さの源泉はどこにあるのか、さまざま角度から分析し解明する。

地域最安値やPBでも安さをアピール(つづき)

キラキラドンキ    安さだけではなくプラスアルファとなる、顧客の期待を超える「楽しさ」「おいしさ」「おしゃれさ」「便利さ」の提供も追求し、商品を展開してきたことも魅力となっていた。しかし、「お客さまのために!」と、商品開発においていつしか安さばかりを追い求める姿勢に変わり、「ドン・キホーテらしさ(=ワクワク・ドキドキ)」の見られない商品を多く販売するようになってしまっていた。

 それに気付き、22年2月より全面的なリニューアルに着手した。ブランドについて、従来は自社完結で開発するものとしていたが、顧客と一緒に商品をつくる「ピープルブランド」へ変革すべく、「ピープルブランド宣言」を行い、普段の買い物を楽しくする「ピープルブランド」として顧客と共創、成長していく方針を明らかにした。

 「情熱価格」についても、顧客の声に耳を傾けて、「ドン・キホーテ」でしかつくれないPB商品を開発していく。

 「情熱価格」に関しては、顧客の率直な意見を取り入れ“最驚”(驚きのニュース)を生み続ける共創サイクルを実現するための中核を担うプラットフォームとして、ダメ出し募集サイト「ダメ出しの殿堂」も開設した。「量が多すぎるから食べきれない」「パッケージから商品がイメージできない」など、顧客が感じたことを気軽に投稿してもらい、真摯に受け止め、顧客が本当に求める商品へ改善するなど、新たな商品開発につなげていくとしている。

 品質改善にとどまらず、思わず手に取りたくなる「驚きのニュース」の提供を目指し、単に高品質な商品を販売するのではなく、その商品が顧客にどれくらいの驚きや、ワクワク・ドキドキを提供できるかを追い求めていく。

 PBは安さとこだわりの二極化が進んでいるが、ドン・キホーテはワクワク・ドキドキという感情を付加することで購買につなげていこうとしている点で独創的だ。

 さらに、「情熱価格」のなかでも、とくに強い自信をもって顧客に伝えたい“最驚”のフラッグシップアイテムとして、新たなブランドライン「ありえ値ぇ!情熱価格」も展開している。顧客に「ありえ値ぇ!」と感嘆してもらいたいという思いで、ワードをそのままロゴマークにして商品パッケージに付けていく。

 顧客の声を取り入れて商品開発していく手法は、すでに多くの企業で採用されている。アンケートや投票の意見・要望を受けて、無印良品の商品を一緒につくっていくプロジェクト「くらしの良品研究所」や、消費者モニターの評価で発売を決める西友のPB「みなさまのお墨付き」が成功事例としてある。

 「情熱価格」の新たな取り組みが実を結べば、圧倒的な安さにプラスアルファの新たな魅力が加わり、最強のPBの1つになる可能性がある。こうして安さを追求しながら改めて打ち出すワクワク・ドキドキの展開の両面作戦で、今後も顧客の支持を高めていこうとしているが、地域密着営業も有力な武器となっている。

現場への権限委譲と「顧客最優先主義」

 PPIHは国内で「ドン・キホーテ」244 、「MEGAドン・キホーテ」140の合計384店舗を展開しており、出店エリアに対応した営業を行っている。

 1店舗あたりの取り扱いアイテム数は約4万5,000点、大型店になると10万点を超える。品ぞろえは地域のニーズに即して店ごとに異なり価格も変えている。これらを可能にしているのが、店舗への大幅な権限移譲である。

 一方、イオンやユニクロ、ニトリなど多店舗展開しているチェーンは、本部が主導して店舗の運営や商品の仕入れを行うチェーンストアオペレーションを導入し、店舗のフォーマットも標準化することで、効率的な店舗展開を可能にしている。

 しかし、品ぞろえが全国どこでも同一であることから地域のニーズとずれが生じ、十分需要を取り込めないというデメリットも生じている。そうした問題を解消するため、イオンリテールは地域ごとに本部を設けて、仕入れの一部を行うなどしているが、ドン・キホーテの場合は地域特性や立地に応じて売り場づくりが行われ、仕入れは本部と連携しつつも、店舗が中心となっている。

(つづく)

【西川 立一】

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