Cultに遭った明治期のグローバル志士たち
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国際ビジネスコンサルタントの浜地道雄氏より、「Cultに遭った明治期のグローバル志士たち」という論考を共有していただいたので紹介する。浜地氏は「統一教会」問題をめぐり、グローバル化が叫ばれる日本には「異文化(宗教)理解、共生」が重要と訴えている。
今話題の「カルト」Cult だが、OED(Oxford English Dictionary)では、“a system of religious devotion directed towards a particular figure of object~”とある。「熱心な」「信心深い」の意であり、そこに反社会的、詐欺集団という意味合いはない。例えばS. Jobsの語録集には“Cult of Mac”という言葉が出てくる。
米国での生活経験からすると、このあたりの宗教観について、日本との意識・認識の差がみられる。もともと本国における宗教弾圧から逃れるために移民してきたわけであり、従い、そこでは種々の宗教が「共生」する姿が見られる。ドイツから逃げてきたキリスト教徒Amish/Mennonite は、今なお「孤高の宗教生活」を維持しているが、これをもCult と分別する説もある。
また、メガチャーチは多くの信者を擁するプロテスタントのキリスト教会であるし、テレビ伝道televangelismはテレビ媒体を活用し広く伝道活動をする。いずれも信者数の拡大と同時に「金銭的基盤」、すなわち献金システムが重要な要素だ。このあたりの活動をもって「(日本的)カルト」とは言えない。
筆者の米国とのビジネス取引にあって、この観点(熱心だが、反社会的とは言えない)からしてCultにはモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会The Church of Jesus Christ of latter–day Saints LDS)を意識することがあった。飲酒、喫煙、麻薬を禁じ、ひたすら勤勉に勉強をする同教徒には優秀な弁護士、会計士、コンサルタントが少なくない。
同教徒として知られるロムニーMitt Romney元マサチューセッツ州知事は勝れた実業家でもあったし、2012 年の大統領選挙では共和党員として有力候補に上がった。一般的に奇異に感じる一夫多妻polygamy は、1896 年に米国45番目の「州」になる際、廃止されている。
こうして思い起こすのは明治初期、日本のグローバル化の先駆者である岩倉具視を団長とする米欧使節団だ。1871(明治4)年横浜を発った使節団はSan Franciscoを経て、1869年に開通したばかりの米国大陸横断鉄道Union Pacific Railwayで翌1872年2月ユタ州ソルトレイクシティに到着した。が、その前途ロッキー山脈が大雪のため鉄道不通となり、同地に結局18日間足留めを余儀なくされた。
同地はモルモン教の聖地であり、一行は教祖ブリガムヤングとも会い、深夜に及ぶ大歓迎を受けた(『堂々たる日本人―知られざる岩倉使節団』泉三郎)。一行は、はからずも信仰の自由政策をとる米国政府のモルモン教徒への対処について見聞。使節団副使・伊藤博文は「積極派」だったが、岩倉大使は「決して今回は解禁しない」という立場であった由。「文明開化」にあたり、(キリスト教)伝道の可否論の良き準備になったと言える。150年後の今、改めて異文化(宗教)理解の意味・意義を考えさせられる。
※なお、本論の初出は『グローバル経営』(2022年11月号、日本在外企業協会)
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