2024年11月25日( 月 )

『金持ち父さん』ロバート・キヨサキ氏もドルの危機を警告

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、2月10日付の記事を紹介する。

 日本でも大ベストセラーとなった『Rich Dad Poor Dad』(邦題『金持ち父さん、貧乏父さん』の著者であるロバート・キヨサキ氏が、このところ衝撃的な警告を繰り出しています。曰く「アメリカ経済は破綻の瀬戸際に立っている。国際通貨として君臨してきたドルの終焉は近い」。彼の見立てによれば、「ドルが崩壊すれば、株も債権もミューチュアル・ファンドも紙くずになる」とのこと。

ドル イメージ    聞き捨てなりません。確かにアメリカの抱える累積赤字は31兆ドルを突破し、この瞬間も増え続けています。しかも、長期化するウクライナ戦争のせいで、アメリカによるウクライナへの資金援助は鰻登りです。ウクライナへの支援見直しの議論も起きてはいますが、同時に、台湾有事とか中国との戦争の可能性が取り沙汰され始めています。

 しかし、新たな戦争を想定すれば、経済的な裏付けが気になるはずです。かつてないほどの財政破綻状態にありながら、アメリカのドル高、すなわち円安が加速しているのはなぜでしょうか。やはりアメリカが世界の紛争や戦争に関わるうえでは国際基軸通貨「ドル」が欠かせないからです。

 思い起こせば、一時、円高傾向が見られましたが、瞬く間に雲散霧消してしまいました。それはひとえにアメリカが金利を操作し、ドル高を演出しているからです。FRBはアメリカ財務省とタッグを組み、ほぼ無制限にドル紙幣を擦りまくっています。だからこそ、「金持ち父さん」は危機感を募らせる一方なのです。

 裏付けのないドル紙幣を後生大事にため込んでいても、間もなく大暴落になってしまい、泣きを見るのは確実だと警鐘を鳴らしています。ではキヨサキ氏のアドバイスは何でしょうか。彼曰く「買うなら金か銀だ。レアメタルも買いだろう。不動産も意味がある」。要は、価値の保証のないドル紙幣に見切りをつけ、価値が保証されている現物にシフトするように忠告しているわけです。

 さらに「金持ち父さん」は先を読んでいます。曰く「2021年、アメリカがアフガニスタンから完全撤退を決めたその日に、サウジアラビアはアメリカに見切りをつけることにした」。「テロとの戦い」を掲げて20年間にわたりアメリカはアフガニスタンに資金と兵力を投入しました。しかし、何も得ることなく不名誉な撤退を余儀なくされたのです。

 この状況を冷徹に分析したサウジアラビアはアメリカの未来を見限り、中国やロシアと手を結ぶ選択を下しました。石油の決済はドルに限定するとしてきた「ペトロダラー時代の終わり」といえるでしょう。この結果、いわゆる「拡大BRICS」が勢いを増すことになりました。ブラジル、ロシア、中国、南アフリカの4カ国に加え、サウジアラビアやイランなどが相次いでBRICSに加盟する道を選んでいます。

 こうしたドルへの不信感を背景に、世界各国の中央銀行は1967年以降、最高のスピードで金(ゴールド)の備蓄を加速しています。間近に迫っている「ドルの崩壊」もしくは「脱ドル化」を想定し、危機回避策に走っているわけです。キヨサキ氏はそうした世界の動きを冷静に分析し、その先を読もうとしています。

 世界ゴールド評議会によれば、「金の需要は過去55年で最も高くなっている」とのこと。2022年12月、公になっただけで742tの金が世界の中央銀行によって買われたようです。当然でしょうが、一般の金取引価格も上昇しています。

 なかでも中国は世界最速で金の購入を加速しつつ、国内から海外への金の輸出や持ち出しを禁止する措置を発表しました。実は、今、世界で最もたくさんの金を保有しているのは中国に他なりません。個人としての中国人は2万3,000tもの金を買い込んでいる模様です。正に「金本位制」への回帰を見越した動きといえるもの。中国が主導する上海協力機構では、域内の共通通貨として金と連動した「デジタル通貨」を採用しようとしています。

 日本政府はアメリカの意向を忖度し、赤字国債やドルを大量に買い支えていますが、実に危険な状況だと言わざるを得ません。2008年の金融危機を予測したことで知られるニューヨーク大学のルービニ教授は「今後10年以内にドルは消滅する」と予言しています。いずれも傾聴に値するはずです。

 次号「第330回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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