政府見解はこうしてつくられる
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「税制変更の経済効果試算の例は氷山の一角」と指摘した2月12日付の記事を紹介する。
昨日言及したTPRについての事実関係を記述する。1985年から1987年、私は大蔵省の財政金融研究所で大蔵事務官、大蔵省研究官として勤務した。その丸2年間、植田和男氏と同室で仕事をした。定員4名の広くはない研究部別室での勤務。2年目の研究課題は短期金融市場における日銀の金融政策オペレーションだった。
主任研究官として在籍した植田和男氏と共同研究に携わらせていただいた。1年目の主要任務は税制改革の経済効果試算。中曽根内閣が大型間接税導入を検討していた。税制改革を実施したときにどのような影響が生じるかについての政府試算を担当した。マクロ計量モデルを作成し、経済効果の分析を行った。背景に、大型間接税導入に向け、財政金融研究所においてTPRプロジェクトが発足したことがある。
TPRはTaxのPRのこと。PRと表現すると聞こえが悪くないが、実態は世論操作、世論誘導活動だった。
当時、大蔵省内でKBKという符丁が用いられた。KBKとは「課税ベースが広い間接税」のこと。大型間接税を導入する目論見があり、これをKBKと称した。
TPRはKBKを導入するための世論操作活動。財政金融研究所研究部が事務局を担当することになった。大臣官房企画官がTPR担当に任ぜられた。
当時の大臣官房調査企画課の参事官が黒田東彦氏だった。私が担当した経済効果試算は研究部の課長補佐を経由して黒田参事官に報告され、大蔵省の見解が取りまとめられた。
私も黒田参事官に何度も説明にうかがった。TPRの主要業務は世論誘導と世論監視。政界、財界、学界3,000人リストが作成された。大蔵省職員が手分けして約3,000人に対する説得工作を実施した。事務局の財政金融研究所研究部が3,000人リスト=電話帳の管理を行った。B4サイズの電話帳に五十音順の名簿が作成され、各人の列に日付と応接録内容を記載する欄が設けられた。
KBK導入に賛同を得られるまで「説明」が繰り返された。了承を得られれば当該人物に対する「ご説明」=「説得」は完了する。賛同を得られなければ一階級上の大蔵省職員が説得にうかがう。網羅的に有識者に対するローラー作戦が展開された。主要メディア幹部を集めての「説明会」も開催された。
築地吉兆なども「ご説明」の場として利用された。電話帳管理と並行して「TPRウィークーリー」と題する取りまとめも行われた。新聞、テレビ、雑誌におけるKBK関連の各人発言が精密にチェックされた。とりわけ重点的な精査が行われたのがKBKに反対意見を提示する者のウォッチである。
KBKに反対する識者をリストアップし、いわゆるブラックリストが作成された。このときのKBK=大型間接税導入は失敗に終わった。中曽根首相が総選挙前に「投網をかけるような大型間接税は導入しない」と発言したことが強く影響した。
※続きは2月12日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「政府見解はこうしてつくられる」で。
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