2024年07月16日( 火 )

ウクライナ美化報道の重大な誤り

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事(メルマガ版)を抜粋して紹介する。
 今回は、このたびのウクライナ戦乱について流布している、ロシアを一方的に悪魔化する言説の誤りと欺瞞を指摘する2月21日付記事を紹介する。

いま何よりも求められることは戦争の終結。戦争の拡大、長期化ではない。

米国は戦争の拡大と長期化を指向している。これに対して中国は戦争の終結に向けての調停に積極的な姿勢を示す。どちらの姿勢が正しいのか。頭を冷やして考えるべきだ。

米国のブリンケン国務長官は2月19日に放送された米メディアのインタビューで、「中国がロシアに対して、殺傷力のある支援の提供を検討しているのではという懸念を抱かせる情報がある」と述べるとともに、「殺傷力のある支援」には弾薬や武器そのものの提供などが含まれると指摘した。

ブリンケン氏は2月18日に中国外交トップ王毅氏と会談した。会談でブリンケン氏は、中国がこうした支援に踏み切れば、両国の関係に「深刻な結果をもたらす」と警告したとのこと。これに対して中国政府が強く反発した。

中国政府は、「戦場に絶え間なく武器を提供しているのはアメリカだ」と指摘。中国外務省の汪文斌報道官は、「戦場に絶え間なく武器を提供しているのは中国ではなくアメリカだ。アメリカ側は中国に命令する資格がない」と述べた。そのうえで、汪報道官は「中国のウクライナ問題における方針は平和を進め交渉を促すことだ。中国は引き続き、情勢の緩和のため建設的な役割を果たす」と主張した。

中国政府の主張は正鵠を射ている。そもそもウクライナ戦乱は米国が誘発したものだ。ウクライナ政府が国際法として確立しているミンスク合意を誠実に履行していればウクライナ戦乱は勃発していない。ウクライナは米国の指令に従い、ミンスク合意を踏みにじり、ロシアとの軍事敵対路線を鮮明にし、ロシアの軍事行動を挑発した。その結果としてウクライナ戦乱が勃発した。

その戦乱を収束させず、長期化、拡大させているのは米国である。ウクライナの戦闘に用いられている兵器は米国を中心とするNATOが提供したもので戦争はロシア対NATOの性格を強めている。

戦乱発生には原因がある。ロシアが一方的に悪く、ウクライナが善というわけではない。

そもそも、2014年に米国が工作してウクライナの親ロシア政権が暴力革命によって転覆されたという経緯がある。樹立された非合法政府は東部のロシア系住民支配地域に対して人権侵害、弾圧、虐待行為を展開した。ロシア系住民がこれに抵抗して内戦が勃発した。

クリミアでは住民が住民投票によってロシアへの帰属を決定した。民族自決の原則に従えば、クリミアのロシアへの編入には正統性がある。米国のキッシンジャー元国務長官が示唆するように、ウクライナ問題の着地はウクライナの分割しかないと思われる。ミンスク合意の原点に立ち帰り、話し合いによって問題を解決することが賢明である。

※続きは2月21日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「ウクライナ美化報道の重大な誤り」で。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

関連記事