日銀人事国会質疑に欠けていたもの
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NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事(メルマガ版)を抜粋して紹介する。今回は「日銀新体制発足後、金融政策運営の『軌道修正』に期待する」とした2月24日付の記事を紹介する。
日銀の次期総裁、副総裁候補者に対する所信聴取と質疑が衆院議員運営委員会で実施された。3名の候補者の所信陳述ならびに質疑への答弁は安全運転に徹したものだった。
通常の国会審議では事前に質問が通告され、事務方が答弁を用意する。これに対して所信聴取ならびに質疑では、質問を受けてその場で答弁しなければならず、回答者の力量が直接反映される。この意味で候補者にとって気の抜けない場面である。
日銀総裁に求められる資質が3つあると考える。これはFRB議長も同じ。第一は適正な専門知識。経済学、金融政策理論についての高度の専門性が要求される。第二は現実の経済金融変動を的確に捕捉し、適切な政策対応を示すことができる洞察力と現実適応力。第三は望ましい政策運営を円滑に執行するための折衝能力と対話能力。
とりわけ、日銀の業務運営は政治からの風圧に晒される。政治過程のなかで最適な政策運営を貫徹しなければならない。政治からの風圧に左右されない突破力と市場の混乱を回避する対話能力が求められる。
第一の要件を満たす上では経済学の専門家であることが望ましい。あらゆる質問に対して即時に適正な見解を示すためには高度の専門能力が必要不可欠になる。この意味で経済学者を総裁に起用することは妙案である。
米国のパウエル議長のように弁護士出身者でも高度な専門能力を体得できる例もあるから必須ではないが、高度で正確な専門能力を保持する者が担うべき職責である。
しかしながら、学術的な業績を保持していても、現実の経済金融変動に対する鋭い洞察力がなければ現業である日銀幹部の職責を担うことは適切でない。さらに重要であるのが折衝能力と市場との対話能力である。
米国の場合、パウエル議長もイエレン議長も3つの要件を兼ね備えていた。米国人材の層の厚さが際立っている。
この基準に照らしたときに、植田和男氏は3つの要件を満たす希有な人材であ
ると判断できる。24日の所信聴取と質疑応答では安全運転に徹するとともに、回答が難しい質問に対しては相手を煙に巻く芸当も示した。金融政策運営は今後、軌道修正されることになると考えられるが、政策運営において重要なことは政策運営の連続性である。現行の日銀法にはこの点で根本的な欠陥があると言わざるを得ない。日銀政策委員会メンバーの人事権が内閣に付与されていることだ。真逆の考え方を持つ内閣が政権を引き継ぎ、日銀人事が行われると、日銀の政策運営が激変してしまう。
内閣が金融政策運営の独立性を尊重し、政策運営の連続性を考慮して人事を行えば問題が顕在化しないが、内閣が極端な人事を断行すれば政策運営に大きな混乱が生じる。安倍内閣発足後の人事において、この問題が顕著に表れたといえる。
※続きは2月24日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「日銀人事国会質疑に欠けていたもの」で。
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