2024年11月05日( 火 )

幸福実現党を設立し、政治変革を志した大川隆法氏(後)

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 昨年7月の安倍元首相銃撃事件から政治と宗教の問題が注目を集めるなか、公称1,100万人を誇る日本有数の新宗教「幸福の科学」の創立者、大川隆法氏が逝去した。同氏は宗教団体のみならず幸福実現党も設立し、自らも立候補。いまや多くの地方議員を擁する政治団体に発展させた。これまでの同党の取り組みを振り返りつつ、カリスマ教祖亡き後の教団の行方を考察する。

教祖なき後の教団の行方

夕闇 イメージ    宗教と政治については、昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件以降、旧統一教会と自民党などの関係がさかんに取りざたされ大きな問題となった。2012年に死去した文鮮明教祖と安倍元首相の祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相の3代にわたる関係がクローズアップされた。霊感商法や桜田淳子氏などの参加で話題となった合同結婚式や献金の問題だけでなく、それまで注目されてこなかった、いわゆる「宗教二世」の問題にも関心が高まっている。

 旧統一教会は反共産主義を掲げ、国際勝共連合や世界平和連合という関連団体を通じて、自民党を中心とする多くの国会議員、地方議員を支援してきた。表に出るような動きはせず、選挙事務所や後援会組織に信者を送り込む、秘書を派遣するなど、不透明な部分が多い。議員はその答礼に、教団の集会に出席したり祝電を送ったりする。なかには政策協定書を結んだ議員もいた。自民党のガバナンス遵守で、旧統一教会と政治家の関係は遮断されたが、統一地方選挙に無所属で立候補を予定する人のなかには旧統一教会の信徒もいるようだ。いまだに同性婚が実現しないのは、旧統一教会の影響ではないかと指摘する声もある。そもそも韓国の新興宗教で、北朝鮮との関係が囁かれるほか、福岡でも多くの霊感商法被害が報告されている。2009年には福岡県警が霊感商法で信者を逮捕し、教団施設を家宅捜索するなど、その反社会性が問題となってきた。

 幸福の科学に対してカルトなどの批判の声もあるが、教団の資金を投じ、公明正大に政治への関与をしてきたことはもっと評価されてよいはずだ。

 問題は、カリスマ教祖なき後の幸福の科学がどのような道を歩むかだろう。創価学会においては、今年で齢95歳になる池田大作名誉会長が、2010年以降、公に姿を現さなくなった。先月、元公明党の代表代行で環境庁長官も務めた浜四津敏子氏が3年前に79歳で亡くなっていたことが明らかとなった。世代交代とも重なり、創価学会内部の勢力争いが勃発、池田氏の保有する資産を今後どうするのか、誰が池田氏の後継者となるのか、注目されている。

 創価学会が急成長を遂げたのも、戦後、集団就職で地方から多くの人々が東京や大阪などの大都市に集まるなか、その教えが中小企業に勤務した人や自営業を営んだ人たちの心に強く訴えかけたからである。いわゆる「一世」にあたる世代であるが、いまや二世、三世の時代に移り、その多くが学会活動に消極的になっている。公明党の得票数も年々低下している。

 これと同様の動きが幸福の科学においても起こる可能性がある。大川隆法氏の長男・宏洋氏は元教団幹部でユーチューバーだが、「カルト宗教から国民を守る党」の代表として、教団批判を含めた発信を続けている。宏洋氏は一部メディアの取材に対し、もし後継者となったら、父である隆法氏や教団の持つ土地や装飾品などを全て売却し、カルトの被害にあった人たちに返金すると宣言している。

 旧統一教会は、文鮮明教祖の死去後、妻の韓鶴子(ハン・ハクチャ)氏が実権を握ったが、文鮮明夫妻の7男・文亨進(ムン・ヒョンジン)氏はアメリカでサンクチュアリ教会を結成。日本においても、日本統一教会第7代会長を務めた江利川安栄氏が日本サンクチュアリ協会会長を務め、全国に支部がある。文亨進氏は実母の韓鶴子氏を「サタンだ」と罵る。昨年の亨進氏の来日に際しては、福岡県久留米市において行われたサンクチュアリ協会の集会で、旧統一教会側とサンクチュアリ協会側で小競り合いが起きている。宗教団体における跡目争いは、一般家庭以上のものがある。

 大川隆法氏の強いカリスマ性で維持されてきた幸福の科学である。その未来は、後妻の紫央氏、そして宏洋氏を含む5人の子どもたちのなかで、誰が大川氏の理念を継承していくかにかかっているだろう。

 戦後日本社会に台頭した新宗教は、例外なく信者の高齢化や二世問題などを抱え、幸福の科学を含めて厳しい組織運営を迫られている。大川氏の死去によって、幸福の科学も他教団同様、分裂の道に向かうのか。今後の動向から目が離せない。

(了)

【近藤 将勝】

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