総務省文書「捏造」発言で窮地の高市大臣が推進する産業版秘密保護法(前)
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総務省行政文書「捏造」発言で閣僚辞任の瀬戸際まで追い込まれた高市早苗大臣──。3月7日の立憲民主党ヒアリング(放送法解釈変更問題)の終了後、“火付け役”の小西洋之・参院議員に「高市さん、もう辞任必至ですか」と聞くと、こう即答した。
「当然、そうでしょう。自分が大臣のときの総務官僚がつくった資料を捏造呼ばわりしたのだから」
この日のヒアリングの冒頭で小西氏は、これは放送法の破壊」、たった1つの番組だけで時の総務大臣の判断で違法を認定して電波を止めることができるという話」と強調。「補充的解釈」という磯崎洋輔・元首相補佐官の主張を否定したうえで、こんな警告を発した。
「この瞬間も日本の放送に国家権力がいつでも介入できるという恐ろしい解釈が今でも生きている」
この解釈変更の主役の1人が高市大臣とも指摘し、補足した。「『安倍総理がやろう、ゴーサインが出るのだったら私はやります』と言ったのが高市大臣です」。
安倍元首相の言いなりというのが高市大臣の行動原理のように見えるが、一方で陰謀論めいた見方もあった。3月8日の夕刊フジは「小西洋之議員が公表『取扱厳重注意』放送法文書〝流出〟の背景」と銘打って、“高市潰し”の可能性を次のように指摘したのだ。「高市氏は経済安保相として、安全保障に関わる機密情報を扱える人を認定する『セキュリティ・クリアランス(S・C=適格性評価)』創設の正念場を迎えている。反対派の妨害工作との見方もある」。
この妨害工作説の真偽はさておき、産業版秘密保護法ともいえる「セキュリティ・クリアランス」創設を高市大臣が推進しているのは紛れもない事実だ。 2月11日、日本会議広島福山支部主催の集会で高市大臣はS・Cについて熱っぽく訴えていたのだ。
「いま私が突き当たっている壁として、ようやく昨年の年末あたりに、広島出身の岸田総理が『これだったら仕方がないのかな』と少しずつを動かしていただいたのですが、ただ昨日(2月10日)もお話したのですが、あまり積極的ではない印象を受けたのですが、セキュリティ・クリアランス。この制度をどうしてもつくたいのです。これ、広島県で世論を盛り上げていただけませんか。私はもう大臣になった限りは、これを実行しなければ、制度をづくらなければ、死んでも死に切れない」
岸田首相を突き動かす世論喚起を日本会議関係者に呼びかけた高市大臣は、安倍元首相が成立させた特定秘密保護法の“産業版”がS・Cという説明もしていった。
「S・Cは、国がもっている非常に重要な情報、産業情報、技術情報を含めて、そういう情報を含めて指定して、その情報に接する人に対して資格を与える制度です。だから現状、似たような制度があるのは安倍総理が本当に大変な反対運動のなかで苦労してつくられた特定秘密保護法だけなのです」
「岸田総理の説得も続けてまいりました。やはり総理が心配している気持ちもとてもよく分かります。統一地方選挙も控えている。以前、特定秘密保護法をづくるときにやはり反対運動はありました」
岸田首相の慎重姿勢に理解を示しながらも高市大臣は、こんな決意表明をして講演を締め括った。
「S・C だけはやり遂げないと、打たれ強くて鈍感力だけが売りの私が、何のために経済安全保障担当大臣になったのかが分からない。早く、公式に岸田総理からキックオフのご指示をいただいて、そのうえで可及的速やかに法律案にしたいと思って、下ごしらえの準備だけは今まで一生懸命やってきた。(法案提出をしたら野党が)また国会でバンバンバンと来ると思うが、何を言われてもこたえる人間ではないので、一生懸命やらせて欲しいと思っている」
(つづく)
【ジャーナリスト/横田一】
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