「西スポ」休刊によせて 「24328号」という重みと示唆すること
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福岡県や九州以外に住む者にとって、「福岡ダイエーホークス」や「福岡ソフトバンクホークス」の情報を得ることは、かつては大変難しいことであった。1990年代からつい最近まで、東京とその周辺に住んでいたホークスファンの筆者は、少なくともそう感じていた。
ホークスが弱かったころはとくにそうで、テレビなどでは試合結果をわずかに放送するくらい。スポーツ紙の情報量も同様だった。ジャイアンツに関する情報量が圧倒的に多い時代で、仕方のないことだった。ところが、インターネットの普及にともない、東京に住んでいてもホークス情報に触れられる機会が劇的に増えた。スポーツ紙などの記事が携帯端末などでいつでもどこでも、しかも無料で確認できるようになったからだ。ある時期には福岡のテレビ・ラジオ局がライブの試合動画や音声を無料で流していた。会社に居残りPCでナイターの様子を確認してから帰宅の途につくこともあった。
話をスポーツ紙に戻すと、ホークス情報をより詳しく入手できるようになったのは、『西日本スポーツ』(以下、西スポ)の記事がインターネットで無料配信されるようになったことがとても大きくかった。
地元のスポーツ紙であることから、情報の質・量ともにほかより充実しており、東京にいながらホークスやその選手の活躍、そして福岡・九州の人たちのホークスへの関心の高さを知ることができた。
その「西スポ」が31日をもって新聞発行を終えた。
1955年2月21日の創刊。以来68年にわたって発行を続け、その前年に初のリーグ優勝をはたし福岡の人たちを熱狂させた「西鉄ライオンズ」の情報発信を皮切りに、福岡や九州、さらには全国のスポーツとその文化を発信し続けてきた。
最終号をみると「24328号」とあった。
それだけ長く多くの人たちに愛され、読み続けられてきたということであり、同じ情報に携わるものとして、制作関係者らの苦労と、福岡・九州のスポーツ文化への愛情がその数字から偲ばれた。
何であってもそうであるが、継続は難しいこと。2万4,328回発行ということに敬意を表したいし、発行が事実上終了したことは関係者にとって忸怩(じくじ)たる想いであることは想像に難しくない。
厳しさが増すメディアをめぐる環境
ところで、西日本新聞社によると、西スポの情報は今後、ウェブ配信されるということで、媒体自体がなくなるわけではない。ただ、西スポの新聞休刊はあらゆる情報メディアに対して、重要な投げかけを行っているように感じられてならない。
投げかけられているのは、メデイアとしての生き残り戦略だ。
今回の出来事については、ホークス情報というキラーコンテンツをもち、地域密着でその他スポーツ情報を発信するという強みがあった西スポでさえ、メディア運営が困難になったということがいえる。
さまざまなメディアが乱立し、情報発信の手法も日々進化、そして人々のライフスタイルや指向性が多様化するなかで、仮に強みがあったとしても、それが収益につながるビジネスモデルでなければ成立しない時代になったということだ。
発行元の(株)西日本新聞社は、余裕のあるうちに対処をするという意味で、西スポの休刊に踏み切ったという。それはそれでメディアとしての生き残り戦略といえるが、ウェブ配信化が同社の今後の成長につながるのかはまた別問題のように思われる。
もっとも、西スポのようなスポーツ紙だけでなく、大手新聞やテレビ・ラジオ局であっても経営やメディア運営に大いに苦労し、新たなカタチを模索している。TwitterやFacebookなどのSNSを含む、ネット情報メディアであってもそれは同様である。
だからというわけではないが、メディアの生き残り戦略として何が適切なのか分からないというのが、正直な筆者の思いだ。
ただ、西スポ休刊は、同じメディアに関わるものとして、メディアや情報発信の在り方、情報の価値について常に模索し続けなければならないということに、改めて気付かされる出来事となった。
【田中 直輝】
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