保守分裂の八女市・八女郡選挙区を歩く(後)
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3月31日、福岡県議会議員選挙が告示された。44ある福岡県議会の選挙区のなかでも、激しい戦いが展開されているのが県南の八女市・八女郡選挙区である。保守地盤が厚いとされる同選挙区においてなぜ、保守系が分裂し立憲民主党新人が名乗り出たのか、背景を探った。
不可解な公明党の動き
今回の選挙で、福岡県議会議長の桐明氏が危機感をもつのは、保守分裂に加え、労組が支援する元八女市職員・青木剛志氏が立候補したことだ。近年の選挙結果に注目点がある。
青木氏は21年の衆議院選挙に福岡7区から立憲民主党公認で立候補し、現職の藤丸敏氏に敗れたものの、55,820票を獲得している。八女市においては、藤丸氏が17,339票を獲得したのに対し、青木氏は10,526票だった。投票率は54.52%であった。広川町は、藤丸氏が5,435票、青木氏は3,076票であった。投票率は54.67%だった。
八女市と広川町の投票率はほぼ同じである。現在、八女市の人口は約6万人、広川町の人口は約2万人である。八女市は、旧八女郡町村と合併した2009年に69,057人いた人口が、今年1月の時点では60,679人と、約1万近く減少している。都市部への転出などによるものだが、当然ながら有権者数も減ることになる。投票率も前回の衆院選同様の5割程度とみた場合、保守分裂では青木氏が漁夫の利を得ることになりかねない。その結果、仮に現職の議長が落選という事態になった場合、八女地域と県や国との関係がどうなっていくのか懸念する声は多い。
桐明氏を応援する牛島孝之八女市議会議員は、「保守は今こそまとまらないといけません。市長はどんどん箱モノをつくろうとしていますが、将来の子孫に財政難のつけを残すことになりかねません。自主財源が27%しかない八女市にとって、県や国とのパイプは重要で、県政最大会派の自民党とつながっていかないと、ますます衰退していきます」と述べつつ、危機感をあらわにしている。
31日にJAふくおか八女フラワーセンターで行われた栗原悠次氏の出陣式には、八女市長、広川町長はじめ、両自治体の市議、町議多数が出席していた。そのなかで、公明党八女支部長を務める大坪久美子・八女市議は、「議長は実績があり大丈夫なので、公明党は栗原さんを推薦しました」という趣旨の挨拶を行った。先月22日、公明党が栗原氏に正式に推薦状を渡したが、連立パートナーの自民党ではなく、栗原氏を推薦することにしたわけだ。筑後市や柳川市も同様に、公明党は対抗馬を推薦しているが、公明党の支持基盤である創価学会の組織力は往時の勢いはないとはいえ、地方に行くほどその底力は侮れない。
県南地域のある保守系議員は「議長だから、重鎮だから選挙は大丈夫、なんてことはない。公明党は一体どういうつもりで対抗馬を推すのか」と訝る。
各種世論調査で岸田政権の支持率が回復傾向にあるとはいえ、昨年相次いだ閣僚の辞任ドミノや旧統一教会と政治の関係など、与党に厳しい見方は依然としてある。三つ巴の戦いで、保守系で2議席を獲得するのか、それとも現職いずれかが落選の憂き目に遭うのか。保守分裂のなかで、有権者がどのように判断するのか注目される。
(了)
【近藤 将勝】
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