アメリカ大統領選挙の行方
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、4月14日付の記事を紹介する。2024年のアメリカ大統領選挙を左右しかねないのがトランプ前大統領を巡る裁判の行方です。トランプ氏は前途多難。なぜなら4月4日、ニューヨークのマンハッタンの検察官から依頼された陪審員23人が起訴を決定したからです。34もの罪状を突き付けられてしまいました。大統領経験者にとっては前代未聞の出来事です。
その目玉はポルノ女優ストーミー・ダニエルズへの口止め料13万ドルを弁護士費用として虚偽報告したというもの。ニューヨーク地裁は5年かけて証拠固めに取り組んできた模様です。実は、これまで判明しているだけでもストーミーとは別の元ポルノ女優のジェシカ・ドレイクをはじめ、19人の女性と不倫関係を重ねてきたトランプです。
子供の数も半端ないと言われています。というのも、NYに聳え立つトランプ・タワーのドアマンにも「隠し子隠ぺい」のために口止め料を支払ったことが判明しているからです。そのドアマンによれば、トランプはドアマンやスタッフに毎回100ドル紙幣をばら撒いてきたとのこと。
また、元プリスクール教師で、後に雑誌「プレイボーイ」のモデルとして活躍したカレン・マックドーガルとは1年近く、月5回の頻度で不倫関係にあったことが判明しています。彼女曰く「トランプとは結婚する約束だった」。そのため、「避妊もしなかった」そうです。その彼女には15万ドルの口止め料を支払ったようです。
トランプはカレンに対して、映画やTVマーシャルへの出演やフィットネスや健康モデルの職を約束したようですが、いずれも実行されませんでした。彼女はそうしたトランプの無責任ぶりを手書き8ページの怒りの告発状にまとめて公表しています。しかし、「今でもトランプを愛している」と健気なコメントも明らかに。
いずれにせよ、もし34の罪状が全て有罪となれば、その合計の刑期は136年間に及ぶことになります。現在76歳のトランプですから、刑期を務め上げたあかつきには、212歳になる計算です。「アメリカを再び偉大な国にする」(Make America Great Again)と訴えてきたわけですが、彼自身の前途は惨めなものになるかも知れません。
当然でしょうが、メラニア夫人は愛想を尽かしています。繰り返される浮気に匙を投げ、離婚訴訟も視野に入ったようです。今や「メラニア・ファースト」のため、トランプを無視するばかりで、フロリダの豪邸でも食事を一緒にすることはないようです。
一方、トランプといえば「魔女狩りだ。バイデン政権が裏で糸を引く違法な司法介入で、自分は無罪だ」と主張。とはいえ、アメリカ国民の6割は「起訴は当然」とクールな反応を見せています。ただ、熱烈なトランプ支持者はかえって団結を強め、選挙のための献金額も急増中の模様です。
そんな中、注目されるのは「ドナルド・トランプ金の延べ棒」です。ドルへの信用が低下しているため、価値の裏付けのあるゴールドの評価が高まっており、トランプはこれまでのTシャツや帽子ではなく、ゴールドの販売に力を入れ始めています。不動産ビジネスで成功と失敗を繰り返してきたトランプ流のサバイバル・ゲームに他なりません。
いずれにせよ、「ホワイトハウス返り咲き」を狙うトランプにとっては今が正念場。ポルノ女優は「いつでも法廷で証言する」と強気の姿勢。どうやらトランプ側にもポルノ女優側にも「隠された意図」があるようです。何しろ、彼女はビジネス上手で、政界入りも意図しているほどですから。
とはいえ、アメリカの歴代大統領が例外なく不倫問題を抱えてきたのも事実です。ルーズベルトはファーストレディのエレノアの女性秘書と、ケネディはマリリン・モンローと、ジョンソンは多くの女性と不倫を重ね、フォードは東ドイツの女性スパイと、クリントンはホワイトハウスのインターンのモニカ・ルインスキーと、といった具合。
ブッシュに至ってはテキサスの女性を誘拐、強姦しています。その被害者の女性はブッシュに対して5,000万ドルの訴訟を起こしたのですが、自殺で幕引きとなったまま。要は、これまでのアメリカの大統領たちは不倫まみれと言っても過言ではありません。
一方、バイデン大統領は依然として再出馬するのか態度を鮮明にしていません。そこで民主党候補として名乗りを上げたのがロバート・ケネディ・ジュニア。言わずと知れたケネディ元大統領の弟で、元司法長官で暗殺されたロバート・ケネディの息子です。いまだに根強い「ケネディ神話」の復活となるのでしょうか? 4月19日、正式の出馬イベントが予定されています。
そんなケネディ・ジュニアですが、2年前に出版した『ファウチの真実』と題したベストセラーで、ワクチン批判の急先鋒の役割を果たしてきました。もし、彼が民主党の候補になれば、トランプとケネディの戦いになります。トランプにとっては、裁判問題を抱えているわけで、益々厳しい選挙になりそうです。
そんな中、トランプが望みを託しているのが、「AI との一体化」です。人間と人工知能を合体させ、老朽化した人体はロボット化させ、無限の命を手に入れるというプロジェクトへの関心を高めています。
この推進役はかつてグーグルでエンジニアを務めていたカッツウェル博士です。未来研究の分野でもよく知られた存在ですが、彼の最新の研究によれば、「2030年までに人類は不老不死の技術を手にする」とのこと。
電気自動車や宇宙ロケット・ビジネスで有名なイーロン・マスク氏も新たに立ち上げた「ニューラリンク」において、人とAIの合体を目指して実験を繰り返しています。これまではブタやサルを使っての試行錯誤でしたが、2023年には自らが実験台となり、人類初のAIロボット化に着手すると息巻いているようです。
奇想天外を売り物にするトランプのこと、「世界初のAIロボット人間」として「永遠の大統領」を目指すことも、あり得る話かも知れません。そうすれば、たとえ136年の刑期を宣告されたとしても、「Make Trump Great Again」という新たなスローガンで世界を従えることに生きがいを見出すことになるでしょう。
要は、政治の世界もAIの力を導入することで大きく変わる可能性を秘めているわけです。その実験の舞台を提供するのがアメリカ大統領選挙の醍醐味と言えそうです。
次号「第338回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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