2024年12月24日( 火 )

山口2区補選、岸候補と平岡候補が互角の戦い(後)

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応援演説にきた下村氏(右)
応援演説にきた下村氏(右)

    自民党が衆参議席を独占する「保守王国・山口」で、自民公認の岸のぶちよ候補と野党統一候補で無所属の元大臣・平岡秀夫候補がほぼ互角の戦いをしているのが山口2区だ。

 統一教会との関係が報じられた下村博文・元文科大臣は4月13日、告示日の11日に続いて2度目の現地入り。「(個人演説会の開催された)熊毛地区は負けているかもしれない。全般的にも優位ではない」と報告し、家系図掲載による世襲批判に対しては「『二世』『三世』と揶揄されるようなメデイアの報道があるが、これほどすばらしい新人はいない」と反論した。

 ただし、その理由は、安倍晋三元首相も「(山口4区の後継として)のぶちよさんのような人が欲しい」と語ったこと。二選挙区から白羽の矢が立つ“超大型世襲候補”と強調、「皆さまのお力でまず初陣を飾ることができれば、大きく世界のなかで大活躍できる。総理大臣にもなる可能性がある」とも絶賛したのだ。

 しかし関係者は「東京で生まれ育った落下傘候補。地元のことはよく知らない。演説も抽象的で具体性に欠ける」と酷評していた。

 実際、選挙区に関する基礎的知識不足はビラや演説からも一目瞭然。2区内にある米軍岩国基地や上関原発計画にどう取り組むかを書いておらず、13日の個人演説会でも岸候補は、以下のように地元の国策関連課題を並べて「日本の縮図」と言って事足りていたのだ。

「山口2区を見ると、岩国基地やエネルギーの課題。そうした国策にも通じる課題も抱えています。ある意味、日本の縮図ともいえる山口二区から立候補します。その覚悟は、この山口、この日本の未来を創っていく。その未来に一歩ずつ歩んでいく。その決意をもって立候補しました」

 個人演説会の終了後、下村氏を直撃した。

 ──先生、統一教会問題は争点になりませんか。統一教会問題。

 下村 どうですかね。

 ──先生が来るとマイナスになりませんかね。(統一教会と)ズブズブの関係が報道されて。

 下村 どうですかね。

 ──争点にならないということか。

 下村 どうですかね。

 ──お父さんの岸信夫さんもズブズブの関係だったではないか。(告示日に山口4区と2区に入った政調会長の)萩生田さんもズブズブの関係で、みんな応援にきている人、(統一教会と)ズブズブではないか。

 下村 (無言のまま車に乗り込む)

 白いジャンバー姿で握手をして回り、中年女性から「ファンになりました」と声をかけられた岸候補にも同じ質問をぶつけたが、一言も答えることなく走り去った。

 ──(名刺を差し出し)横田と申します。統一教会問題。

 岸 はい、はい。

 スタッフ ちょっと無理です。統一教会問題、争点にならないのか。

 岸 無言のまま支持者に挨拶と握手を続ける。

 ──(走り出した岸候補を追いかけながら)のぶちよさん、統一教会問題、争点にならないのか。下村さんが応援するとマイナスになるのではないか。お父さんはなんで(統一教会と)関係ができたのか。関係を断絶するのか。統一教会問題について一言。争点になりませんか。

 岸 振り向くことなく走り去り続ける。 

 ──(追いかけながら)のぶちよさん、統一教会問題について一言。争点になるのではないか。下村さんが来るとマイナスにならないか。(告示日にきた)萩生田さんもズブズブの関係ではないか。「統一教会問題、関係しない」と楽観視しているのか。

 岸 (無言のまま車に乗り込む)

 なお下村元大臣が4月11日と13日に、統一教会問題を有権者が思い出してマイナスになるリスクがあるのに山口入りをしたのは、岸候補の応援演説だけではなく、企業団体回りで支持を呼び掛けることも目的だった。先の個人演説会で「今日は岩国で社員が1,000人近くの大きな企業に行ってお願いをしてまいりました」と報告をしていたのだ。

 関係者は「東京で生まれ育った岸のぶちよ候補の弱みは、地元に同窓会がないこと。それ比べて平岡候補は小学校も中学校も高校も地元で、同窓会仲間が動いてくれることが強み」と話す。これもほぼ互角の戦いをする一因といえそうだ。

 それに対して、落下傘候補岸陣営は自民党が得意とする企業団体に働きかける組織選挙で対抗しているようだ。幼稚園から大学まで慶応のシティボーイの岸候補と、地元で生まれ育った平岡候補の経歴は対照的で、その選挙の手法においても両陣営で大きな違いが見られた。全国が注目する山口2区補選の結果が注目される。

(了)

【ジャーナリスト/横田 一】

(中)

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