社会問題となった韓国のチョンセ詐欺(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏韓国では入居時に高額の保証金を預ける「チョンセ」という賃貸制度があるが、その制度を悪用した詐欺被害で、保証金の返還を受けられない人が続出しており、大きな社会問題となっている。チョンセ詐欺にあった被害者の自殺は3人目で、被害者たちは政府にその対策を求めている。
一時期は新型コロナウイルスによる景気悪化に対応するための金融緩和策の影響で、不動産市場に資金が流れ続け、不動産価格は、抑制されるどころか上昇に拍車がかかっていた。韓国人が不動産への投資を好む理由は、不動産を買えば、必ず上がるという不動産不敗神話があったからである。
低金利の銀行にお金を預けるよりも、マンションなどに投資をした方が収益率が高かったからだ。だから、お金を借りてでも不動産に投資し、資産を増やそうとする傾向が強かった。ところが、米国の利上げで不動産市況一変し、高騰を続けてきた韓国の不動産価格は下落に転じた。
韓国人の資産の8割は、不動産で占められているが、とくに「投資の対象」であったマンション価格の下落が止まらない。その結果、不動産市場は冷え込み、住宅価格が下落し、住宅ローンに対する金利負担は急増し、その負担に耐え切れず、住宅が競売にかけられるなどの事例が多発している。そのような状況のなか、預けていたチョンセ保証金を返してもらえない借主の被害が続出している。
チョンセ制度とギャップ投資
チョンセとは韓国にある特有の賃貸制度で、毎月家賃を支払う代わりに住宅価格の7割~8割程度のお金を貸主に「保証金」として預ける。貸主はこの多額の「保証金」を運用して収益を稼ぐ。
一方、借主は賃貸契約時にまとまった保証金を支払うことで、月々の家賃を支払う必要がなく、さらに、あらかじめ貸主との間で居住する期間を決めておき、引っ越しする際には預けた保証金は全額戻ってくるので、家賃がタダになるような感覚になるので、韓国では昔からチョンセ物件は非常に人気があった。
たとえば、2億ウォンのチョンセを払い、2年間その家に住む契約を交わしたとすると、2年後、貸主は借主に家を出るよういうこともできるし、交渉によっては続けて住むこともできる。2年経ってその家を出ることになれば、最初に払った2億ウォンを借主から返してもらえる。
ところが、韓国の賃貸制度の根幹をなしていたチョンセ制度にトラブルが続発している。チョンセという制度は不動産が値上がりする際には何の問題もなかったが、不動産が現在のように値下がりすると、多くの問題を露呈するようになる。
物件が値下がりしたことによって、チョンセ保証金より物件の金額がすくなくなると、物件を売却しても保証金を返還できなくなるからだ。また、賃貸で入った物件が抵当権により大家の借金の肩代わりになるなど、保証金を返してももらえない事例は様々である。一方、チョンセ制度を活用した投資である「ギャップ投資」というのもある。
(つづく)
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